請求人は、軽油の仕入先G社、H社及びJ社(以下「本件仕入先3社」という。)はいずれも実在していた会社であり、取引当時の状況から本件仕入先3社を架空の会社などと疑う余地は全くなく、消費税法第30条は納税者が帳簿等の記載内容の真実性を調査し確認する義務まで規定していない旨主張する。 しかしながら、G社は、商業登記がなく、領収証と請求書の住所が異なっており、H社は、商業登記はあるが、その住所地には別人が居住しており、J社は、商業登記がなく、領収書記載の住所が住居表示上存在しないことなどから、本件仕入先3社は実体のない会社であることが認められ、請求人の帳簿等には真実の仕入先の名称が記載されていないこととなる。 そして、軽油をとりまく業界においてはかつてから不正軽油の問題があることは公知の事実であり、取引当時も不正軽油の販売が行われていたこと、本件仕入先3社へ注文する際の電話番号が同じであったこと、本件仕入先3社の集金担当者が同一人物であったことなど、各仕入先の名称が真実のものかどうか、社会通念上からみて相当程度疑われる状態であったといえ、加えて、請求人と本件仕入先3社との取引は、回数も多く、金額も多額であり、すべて現金決済であることからすると、請求人が積極的に確認するのが自然であるところ、これを確認することなく漫然と請求書等を保存し、帳簿に記載していたといわざるを得ないから、請求人において、本件仕入先3社が真実のものと信ずべき相当の理由があったとはいえない。また、請求人は、真実の仕入先の名称等を記載した帳簿等の保存をすることができなかったことにつきやむを得ない事情があったという主張及び立証をしていない。
したがって、本件仕入先3社の名称が記載されている請求人の帳簿及び請求書等は、いずれも真実の仕入先の名称が記載されていないことから、消費税法第30条第8項及び第9項に規定する記載要件を満たした帳簿及び請求書等に該当せず、同条第7項に規定する帳簿及び請求書等の保存がなかったものということとなり、本件仕入先3社との取引については、同条第1項に規定する課税仕入れ等の消費税額の控除を適用することができないとした原処分は適法である。
平成21年1月28日裁決
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