請求人は、帳簿を保存していたのに、調査担当者が第三者の立会い排除要求に請求人が応じないことを理由に帳簿を確認せず仕入税額控除を否認したのは違法である旨主張する。
しかしながら、消費税法第58条は事業者に課税仕入れ等に関する帳簿等の保存を義務付け、同法第62条は税務職員にこれらの帳簿等を検査することを認めている。このように課税仕入れ等に係る帳簿等が税務職員による検査の対象となることを前提に、同法第30条第7項は、事業者が課税仕入れ額に係る帳簿等の保存をしている場合において、税務職員がこれらの帳簿等を検査することができるときに限り、同条第1項の仕入税額控除を適用できる旨明らかにしたものである。
この趣旨からすれば、事業者が仕入税額控除の適用を受けるには、法が定める帳簿等を整理し、これらを所定の期間及び場所において、税務職員による検査に当たり適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要し、事業者がこれを行っていなかった場合には、仕入税額控除は適用されないというべきである。
これを本件についてみると、調査担当者は再三にわたって、帳簿等の提示がない場合には仕入税額控除の適用が認められない旨の説明をした上で、第三者を退席させた上で帳簿等を提示することを求めていたところ、これらの提示要求に違法な点は認められない。そして、請求人が専ら立会いなしでは調査に応じられないという理由で帳簿等の提示を拒んでいたことに照らすと、請求人は、帳簿等の提示要求に応じ難いとする格別な理由がなかったにもかかわらず提示しなかったというべきである。
これらから判断すると、本件は同法第30条第7項に規定する「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に当たり、原処分庁が同条第1項の規定を適用せず仕入税額控除を否認した更正処分は適法である。
平成19年10月3日裁決
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