請求人は、自己が営む個人事業を法人組織とするに当たり、まず金銭の出資により法人を設立し、その後、個人事業に係る資産及び資産と同額の負債を当該法人に引き継いだところ、原処分庁が、本件法人成りは「対価を得て行われる課税資産の譲渡」であるとして消費税等の更正処分をしたのに対し、本件法人成りは、「営業」という組織的有機的一体物の譲渡であるから「営業」それ自体を一個の資産ととらえて課税すべきである。したがって、原処分庁が、かかる「営業」を資産と負債に分離・分解した上で、負債の引受額を消費税法上の資産の譲渡等の反対給付と認定し課税したのは違法である。すなわち、本件法人成りの実態は現物出資と同様であるから、消費税法の適用においても現物出資に準じて取り扱うべきで、そうすると、その対価となるべき取得する株式がない本件法人成りにおいて消費税額は発生しない旨主張する。
しかしながら、消費税の課税対象は、「国内において事業者が事業として対価を得て行われる資産の譲渡等」と解されるところ、消費税法において、資産(非課税取引を含む)及び負債が一体となった「営業」それ自体を一つの課税客体ととらえて課税対象とする規定は存在せず、譲渡された資産の相手勘定を負債とした法人における仕訳処理は、本件法人成りにおいて負債の引受けが資産の引受けの反対給付である証であり、請求人は、資産の譲渡の対価として法人から金銭を収受する代わりに負債を引き受けさせ、債務の支払義務の消滅という経済的利益を得たものであるから、当該負債の引受額は消費税法における資産の譲渡の対価の額に相当する。
平成20年12月15日裁決
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