請求人は、本件賃貸借契約は存在しており、それに基づき本件賃貸料を受領し領収証をF社の従業員Hに交付しているから、本件賃貸料は課税資産の譲渡等の対価の額として存在する旨主張する。
しかしながら、F社の備付け帳簿書類等には、本件建物の完成見学会が開催された旨や本件賃貸料が支払われた旨の記載はなく、また、本件賃貸借契約書は、本件建物の完成引渡し後に、請求人の関与税理士からの再三の申出により、Hが、請求人及びF社の記名・押印箇所に他の書類の記名・押印部分をコピーし、切り貼りするなどして作成した架空のものであることなどからすれば、本件賃貸借契約の締結、本件建物の完成見学会の開催及び本件賃貸料の授受の事実は認められないから、本件賃貸料は課税資産の譲渡等の対価の額として存在せず、本件課税期間の課税資産の譲渡等の対価の額及び消費税の課税標準額はいずれも零円となる。
また、本件課税期間の課税資産の譲渡等の対価の額は零円であるから、課税売上割合は零%となるところ、本件建物は、人の居住の用に供する住宅であると認められるから、本件建物の取得価額等は非課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れの額となり、個別対応方式又は一括比例配分方式のいずれの方式によって算定しても、本件課税期間の消費税の仕入税額控除額は零円となる。したがって、本件課税期間の消費税等の納付すべき税額を零円とした本件更正処分は適法である。
そして、上記のとおり、本件賃貸借契約の締結及び本件賃貸料の授受の事実が存在しないにもかかわらず、請求人は、Hに依頼して本件賃貸借契約書を作成させ、さらに、本件賃貸料を受領したかのように領収証を作成するなど、課税資産の譲渡等の対価の額を架空に作出したものであり、本件建物の取得価額等は、本来非課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れの額となるところ、請求人は、消費税等の還付を受けるため、あたかも本件賃貸借契約及びそれに係る金銭の授受が存在したかのごとく仮装した事実に基づいて、本件建物の取得価額等を課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れの額として本件課税期間の確定申告書を提出したと認められ、これら請求人の行為は、国税通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装行為に該当すると認められるから、重加算税の賦課決定処分は適法である。
平成18年12月7日裁決
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