請求人は、[1]被相続人名義預金に振り込まれた売上代金は、被相続人の妻が全額受け取ったこと、[2]被相続人の事業廃止届を提出したこと、[3]被相続人の雇用していた従業員は、本人の意向を確かめた上で改めて請求人の事業に勤務させたことから、被相続人の事業を承継していない旨主張する。
しかしながら、消費税法第10条の相続により事業が承継されたか否かについては、請求人及び被相続人が営んでいた労働者の派遣業において、事業遂行上不可欠な要素である取引先及び取引先に派遣する塗装工が、被相続人から請求人に承継されているか否かで判断するのが相当であると解されるところ、取引先に関しては、[1]被相続人の事業を行う上で一身専属的な性質を有するものは必要でないこと、[2]請求人は被相続人の取引先との取引を継続していること、[3]請求人と取引先との取引条件は、被相続人が取引していた時と変更されていないことから、被相続人から請求人に承継されていると認めるのが相当である。また、取引先に派遣する塗装工に関しては、[1]被相続人の相続に際し、被相続人が取引先に派遣していた塗装工を請求人が解雇した具体的事実はないこと、[2]請求人は、塗装工を継続して取引先に派遣していること、[3]請求人が取引先に派遣している塗装工の雇用条件は、被相続人の事業に従事していた時と変更されていないことから、実態として、被相続人から請求人に承継されていると認めるのが相当である。
そうすると、本件においては、事業遂行上の要素である取引先、取引先に派遣する塗装工が共に本件被相続人から請求人に承継されているので、請求人は消費税法第10条第2項に規定する、相続により被相続人の事業を承継した相続人に該当すると認められ、請求人に納税義務があるとしてされた原処分は相当である。
平成17年6月10日裁決
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。
*ご利用にあたっては利用規約を必ずご確認ください