法人が自己を契約者及び保険金受取人とし、役員又は従業員を被保険者として次のような内容の定期保険に加入した場合には、被保険者の加入年齢等によっては長期平準定期保険の要件に該当するときもありますが、契約者である法人の払い込む保険料は、定期保険の原則的な処理に従って、その支払時に損金の額に算入して差し支えないでしょうか。
(定期保険の内容)
1 保険事故及び保険金
・ 被保険者が死亡した場合 死亡保険金
・ 被保険者が高度障害状態に該当した場合 高度障害保険金
2 保険期間と契約年齢
保険期間 | 加入年齢 | 保険期間 | 加入年齢 |
---|---|---|---|
30年満了 | 0歳から50歳まで | 75歳満了 | 0歳から70歳まで |
70歳満了 | 0歳から65歳まで | 80歳満了 | 0歳から75歳まで |
3 保険料払込期間
保険期間と同一期間(短期払込はない)
4 払戻金
この保険は掛捨てで、いわゆる満期保険金はありません。また、契約失効、契約解除、解約、保険金の減額及び保険期間の変更等によっても、金銭の払戻しはありません。
(注) 傷害特約等が付された場合も解約返戻金等の支払は一切ありません。
契約者である法人の払い込む保険料は、その支払時に損金の額に算入することが認められます。
(理由)
1 定期保険の税務上の取扱い
定期保険は、養老保険と異なり満期返戻金や配当金がないことから、その支払保険料については、原則として、資産に計上することを要せず、その支払時に支払保険料、福利厚生費又は給与として損金の額に算入することとされています(法人税基本通達9−3−5)。
ただし、定期保険といっても、保険期間が非常に長期に設定されている場合には、年を経るに従って事故発生率が高くなるため、本来は保険料は年を経るに従って高額になりますが、実際の支払保険料は、その長期の保険期間にわたって平準化して算定されることから、保険期間の前半において支払う保険料の中に相当多額の前払保険料が含まれることとなります。このため、例えば、保険期間の前半に中途解約をしたような場合は、支払保険料の相当部分が解約返戻金として契約者に支払われることになり、支払保険料を支払時に損金算入することに課税上の問題が生じます。
そこで、このような問題を是正するため、一定の要件を満たす長期平準定期保険の保険料については、保険期間の60%に相当する期間に支払う保険料の2分の1相当額を前払保険料等として資産計上することとされています(平成8年7月4日付課法2−3、平成20年2月28日付課法2−3による改正後の昭和62年6月16日付直法2−2「法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて(通達)」参照)。
(注) 長期平準定期保険とは、その保険期間満了の時における被保険者の年齢が70歳を超え、かつ、当該保険に加入した時における被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が105を超えるものをいいます。
2 解約返戻金のない定期保険の取扱い
本件の定期保険についても、加入年齢によっては、上記の長期平準定期保険の要件に該当する場合がありますが、当該定期保険は、その契約内容によると、支払保険料は掛捨てで、契約失効、契約解除、解約、保険金の減額及び保険期間の変更等があっても、一切解約返戻金等の支払はなく、純粋な保障のみを目的とした商品となっています。
したがって、当該定期保険については、保険料の支払時の損金算入による税効果を利用して、一方で簿外資金を留保するといった、課税上の問題は生ずることもなく、また、長期平準定期保険の取扱いは本件のような解約返戻金の支払が一切ないものを対象とする趣旨ではありません。
このため、本件定期保険については、長期平準定期保険の取扱いを適用せず、定期保険の一般的な取扱い(法人税基本通達9−3−5)に従って、その支払った保険料の額は、期間の経過に応じて損金の額に算入して差し支えないものと考えられます。
法人税基本通達9−3−5
平成8年7月4日付課法2−3、平成20年2月28日付課法2−3による改正後の昭和62年6月16日付直法2−2「法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて(通達)」
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
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