質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
当社は製造業を営む法人ですが、今般、中小企業再生支援協議会の支援を受けて再生計画を策定することとなりました。この再生計画は、取引金融機関がA銀行1行のみであることから、「中小企業再生支援協議会の支援による再生計画の策定手順(再生計画検討委員会が再生計画案の調査・報告を行う場合)」(以下「中小企業再生支援協議会が定める準則」といいます。)によっているものの、企業再生税制の要件を満たしておりません。
この場合であっても、本件再生計画は合理的な再生計画に該当するものとして、債権放棄をしたA銀行にあっては寄附金に該当せず、また、債務免除を受けた当社にあっては、期限切れ欠損金の損金算入規定の適用ができると考えてよろしいでしょうか。
【回答要旨】
- ご照会の場合は、中小企業再生支援協議会が定める準則に従って策定された再生計画により債権放棄等が行われるものですが、債権放棄を行う金融機関がA銀行1行のみであることから、当該再生計画において「2以上の金融機関が債務免除等をすることが定められていること(政府関係金融機関、株式会社地域経済活性化支援機構又は株式会社整理回収機構は単独放棄でも可)」という要件を満たさず、企業再生税制の適用はありません(平成17年度税制改正で手当てされた企業再生税制の概要については、前問の【民事再生法の法的整理に準じた私的整理とは】を参照)。
- しかしながら、従来から、法人がその子会社等に対して債権放棄等をした場合において、その債権放棄等が例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものであるなど、その債権放棄等をしたことについて相当な理由があると認められるときには、その債権放棄等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする(法基通9−4−1、9−4−2)との取扱いがあり、また、債務者側の取扱いとして、その債務免除等が多数の債権者によって協議の上決められる等その決定について恣意性がなく、かつ、その内容に合理性がある(合理的な再建計画に基づくもの)と認められる資産の整理があった場合には、原則として、期限切れ欠損金の損金算入規定の適用ができることとされています(法59、令117五、法基通12−3−1(3))。
なお、このような合理的な再建計画に該当するか否か等については、次のとおり事前照会が行われ、国税庁から文書による回答がなされています。- 平成13年9月26日回答「『私的整理に関するガイドライン』に基づき策定された再建計画により債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについて」
- 平成15年7月31日回答「中小企業再生支援協議会で策定を支援した再建計画(A社及びB社のモデルケース)に基づき債権放棄が行われた場合の税務上の取扱いについて」
- 平成17年6月30日及び平成24年3月28日回答「『中小企業再生支援協議会の支援による再生計画の策定手順(再生計画検討委員会が再生計画案の調査・報告を行う場合)』に従って策定された再生計画により債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについて」
- 平成26年6月20日回答「『中小企業再生支援協議会の支援による再生計画の策定手順(再生計画検討委員会が再生計画案の調査・報告を行う場合)』に従って策定された再生計画により債務免除等が行われた場合の税務上の取扱いについて」
- 平成27年3月30日回答「中小企業再生支援全国本部の支援により『中小企業再生支援スキーム』に従って策定された再生計画に基づき債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについて」
- 平成16年3月24日及び平成23年9月29日回答「『RCC企業再生スキーム』に基づき策定された再生計画により債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについて」
- 平成20年3月28日及び平成21年7月9日回答「特定認証紛争解決手続に従って策定された事業再生計画により債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについて」
- 平成21年11月6日回答「株式会社企業再生支援機構が買取決定等を行った債権の債務者に係る事業再生計画に基づき債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについて」
- 平成25年6月25日及び平成26年6月26日回答「株式会社地域経済活性化支援機構が買取決定等を行った債権の債務者に係る事業再生計画に基づき債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについて」
- 平成25年6月26日回答「株式会社東日本大震災事業者再生支援機構が買取決定等を行った債権の債務者に係る事業再生計画に基づき債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについて」
- 平成26年6月27日回答「特定調停スキームに基づき策定された再建計画により債権放棄が行われた場合の税務上の取扱いについて」
- ご照会の場合、上記1のとおり企業再生税制の適用はありませんが、本件再生計画が上記平成24年3月28日付の回答にあるような合理的な再生計画に該当するものであれば、債権放棄をしたA銀行にあっては寄附金に該当せず、また、債務免除を受けた貴社にあっては期限切れ欠損金の損金算入規定の適用ができると考えられます(なお、この場合には、法人税法第59条第2項第3号には該当しませんので、期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先して控除することはできません。)。
なお、その再生計画が合理的な再生計画に該当するか否かなど具体的な事前照会については、国税局の審理課(東京、関東信越、名古屋、大阪の各国税局課税第一部)、審理官(札幌、仙台、金沢、広島、高松、福岡、熊本の各国税局課税(第一)部)、沖縄国税事務所では法人課税課又は調査課でご照会に応じています。
【関係法令通達】
法人税法第25条、第33条、第59条
法人税法施行令第24条の2、第68条の2、第117条
法人税基本通達9−4−1、9−4−2、12−3−1(3)
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/14a/02.htm
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