《ポイント》 この事例は、最高裁判所平成22年7月16日第二小法廷判決(平成20年(行ヒ)第241号)の考え方を基に判断を行った最初の裁決事例である。
《要旨》 請求人らは、出資額限度法人(定款において退社・解散時に払込出資額を限度として払戻し・分配等を行うことを決めた社団医療法人)であるT会(本件法人)に対する出資持分(本件出資持分)の価額について、本件法人の定款(本件定款)には、払込出資額を超えて払戻しをしないこと、本件法人が解散した場合の残余財産は払込出資額を限度とすることが定められており、請求人らはいずれの場合においても、払込出資額を超えて払戻し等を受けることはできないから、相続税法第22条《評価の原則》の時価、すなわち、本件出資持分の客観的交換価値は、本件払込出資額を上回るものではない旨主張する。
しかしながら、本件法人は出資額限度法人であるが、出資持分の定めのある社団医療法人であり、また、本件定款には払戻し等に係る定めの変更を禁止する条項が存するが、法令において、定款の再度変更を禁止する定めがない中では、このような条項があるからといって、法的に当該変更が不可能になるものではない。そうすると、本件出資持分の権利の内容の範囲については、本件相続時における定款の定めに基づく出資の権利内容がその後変動しないと客観的に認めるだけの事情はないといわざるを得ず、ほかに財産評価基本通達194−2《医療法人の出資の評価》の定める方法で本件定款の下における本件法人の出資を適切に評価することができない特別の事情も認められないから、本件出資持分について、同通達の定める方法により評価した原処分は相当である。
《参照条文等》 相続税法第22条 財産評価基本通達194−2
《参考判決・裁決》 最高裁平成22年7月16日第二小法廷判決(判タ1335号57頁) 平成18年11月8日裁決(裁決事例集No.72・589頁)
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