本件は、原処分庁が申告漏れ財産が存在するとして第一次更正処分を行うとともに、遺産の一部未分割の場合には、分割済財産を特別受益と同じように考慮に入れ、いわゆる穴埋方式により課税価格を計算すべきであるとして第二次更正処分を行ったところ、請求人が、遺産の一部未分割の場合の課税価格は、分割済財産を考慮することなく、いわゆる積上方式で課税価格を計算すべきである、関係法人に対する貸付金債権(以下「本件貸付金債権」という。)の評価額は○○○○円である等として、原処分の全部の取消しを求めている事案であり、争点は、次の5点である。
未分割財産がある場合の相続税の課税価格の計算方法 本件貸付金債権の評価額 土地の評価額(広大地評価の適用の有無) 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用の有無 第二次賦課決定処分の適否 最高裁判決によれば、相続人が数人ある場合において、相続財産中に金銭その他の可分債権があるときには、その債権は法律上当然に分割され、各相続人がその相続分に応じて権利を取得するものと解される。
しかしながら、遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをするとされるところ、金銭等の可分債権については、その他の財産の分配における過不足を調整させる意味合いから、一般的には、これらを一体と捕らえた遺産分割が行われているところであり、また、家庭裁判所の実務においても、最高裁判決を前提としながらも、遺産を総合的に分割するためには、預金等を含めた方が合理的であり、その実際的必要性が高いため、預金等の可分債権を遺産分割の対象にしている例が多いと認められる。
このような実体を相続税賦課の観点からみるときは、最高裁判決を前提として相続財産が可分債権であることを考慮に入れてもなお、当該財産をもって分割の対象とはならない財産とみることは相当ではないから、当該可分債権について、共同相続人間で実際に分割が行われた場合、実際に分割が行われないまでも、相続分に応じて取得する旨の共同相続人全員の合意がされた場合、一部の相続人が可分債権に対する自己の相続分相当の権利を行使した場合など、明らかにその全部又は一部の帰属が確定している場合を除き、他の未分割財産と一体として取り扱うのが相当である。
平成19年10月24日裁決
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