《ポイント》 本事例は、原処分庁が請求人の母と請求人との間で贈与があったことを示す証拠として主張するその母の相続に係る相続税の調査段階における請求人の申述又は提出資料の内容について、当該調査段階においてさえ変遷が認められる上、審判所の調査によっても、当該申述又は提出資料の内容を直接裏付けるような客観的な証拠や、当該変遷に合理的な理由があることをうかがわせる証拠の存在が見当たらないから、その信用性を認めることはできないと判断したものである。
《要旨》 原処分庁は、請求人の母名義の預貯金口座からの各出金に係る金員が請求人名義の預貯金口座への各入金に係る金員に対応する関係(本件対応関係)にあるとして、請求人が、母から、当該各出金に係る金員を取得した旨主張する。
しかしながら、当該各出金日から当該各入金日までの間隔は、長いものでは約1年10か月もあいている上、当該各出金に係る金員の管理・保管状況は明らかではなく、当該各入金日と同日に、請求人名義の預金口座からそれぞれの日の入金額を上回る出金がされている場合もあることのほか、本件対応関係にない請求人名義の預貯金口座への入金の事実があることも踏まえると、当該各入金の事実のみから、直ちにその原資の全てが当該各出金に係る金員であると推認することはできない。ところで、本件対応関係の存在を認めることができるか否かは、請求人の母の相続税の調査段階における請求人の申述又は提出資料の信用性を認めることができるか否かに帰着するが、当該調査段階における請求人の申述又は提出資料の内容は、そもそも当該調査段階においてさえ変遷がみられるものである上、当該申述又は提出資料の内容を裏付ける客観的な証拠や当該変遷に合理的な理由があることをうかがわせる証拠の存在は見当たらないから、原処分庁がその主張の根拠とした当該申述又は提出資料についてはその信用性を認めることはできず、本件対応関係の存在を認めることもできない。そして、当審判所の調査の結果によっても、他に母から請求人に対する金員の受渡しがされた事実を認めるに足りる証拠は見当たらない。したがって、請求人が母から当該各出金に係る金員を取得したとは認められない。
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