質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
老齢基礎年金(国民年金)の給付の受給権者が死亡した場合に、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給されていない年金がある場合には、その者の配偶者(内縁の配偶者を含む。)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものが、「自己の名」で、その未支給の年金の支給を請求することができることとされています(国民年金法19)。
老齢基礎年金の受給権者の相続開始時に当該死亡した受給権者に係る未支給年金がある場合に、当該死亡した受給権者に係る当該未支給年金を配偶者等が請求することができる権利(以下「未支給年金請求権」といいます。)は相続税の課税対象となる財産に含まれますか。
【回答要旨】
未支給年金請求権については、当該死亡した受給権者に係る遺族が、当該未支給の年金を自己の固有の権利として請求するものであり、死亡した受給権者に係る相続税の課税対象にはなりません。
なお、遺族が支給を受けた当該未支給の年金は、当該遺族の一時所得に該当します。
(理由)
- 1 国民年金法に基づく未支給年金請求権の相続性については、最高裁判決(平成7年11月7日)において、その相続性を否定しています。
すなわち、国民年金法第19条の規定については、同条が未支給年金の支給請求することのできる者の範囲及び順位について民法の規定する相続人の範囲及び順位決定の原則とは異なった定め方をしており、これは民法の相続とは別の被保険者の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とした立場から未支給の年金給付の支給を一定の遺族に対して認めたものと解されているものです。
したがって、未支給年金請求権を本来の相続財産として相続税の課税対象となると解することはできません。 - 2 また、未支給年金請求権は、国民年金法の規定に基づき一方的に付与されるものであることから契約に基づかない権利(請求権)でありますが、相続税法第3条第1項第6号に規定する「これに係る一時金」には、継続受取人が受給を受けるべき「定期金が特別に又は選択的に一時金とされる場合の一時金のみが含まれる」こととされている趣旨からすると、照会の場合の未支給年金については、定期金ではなく最初から一時金のみを支給するものであるため、同号に規定するみなし相続財産にも該当しません。
- 3 以上のことから、未支給年金請求権については、死亡した受給権者に係る遺族が、当該未支給の年金を自己の固有の権利として請求するものであり、死亡した受給権者に係る相続税の課税対象にはなりません。
なお、遺族が支給を受けた当該未支給の年金は、所得税基本通達34−2により、当該遺族の一時所得に該当します。
【関係法令通達】
相続税法第3条第1項第6号
所得税基本通達34−2
国民年金法第16条、第18条、第19条
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/sozoku/02/09.htm
関連する質疑応答事例(相続税・贈与税)
- 町内会に寄附した相続財産
- 受贈した金銭を一般定期借地権に係る権利金又は保証金に充てた場合の住宅取得等資金の贈与の特例の適用の可否
- 住宅取得等資金の贈与と住宅借入金等特別控除との関係
- 配偶者に対する相続税額の軽減の規定の適用を受ける場合の「相続分不存在証明書」の適否
- 同一年中に2人の贈与者から農地等の生前一括贈与を受けた場合
- 入院により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例
- 庭内神しの敷地等
- 被相続人の直系卑属である者が養子となっている場合の相続税の2割加算
- 修正申告等に係る贈与税(相続税)額の納税猶予に係る加算税
- 小規模宅地等の特例の対象となる宅地等の範囲(財産管理人の事業)
- 代襲相続権の有無(2)
- 相続時精算課税を選択した場合の少額贈与についての贈与税の申告の要否
- 建物更生共済契約に係る課税関係
- 支払期日未到来の既経過家賃と相続財産
- 老人ホームに入所していた被相続人が要介護認定の申請中に死亡した場合の小規模宅地等の特例
- 米国籍を有する制限納税義務者が相続税の申告書に添付する印鑑証明書
- 国外財産の贈与を受けた場合の相続時精算課税の適用
- 医療法人の出資持分の変更があった場合
- 調整水田に対する納税猶予の適用
- 暦年課税に係る少額贈与の申告書への記載の要否
項目別に質疑応答事例を調べる