契約期間を満了して退職する期間契約社員に対し慰労金名目で支給された金員は、退職により一時に受ける給与というための要件を満たしているから、退職所得に該当するとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2011/05/31 [所得税法][所得の種類][退職所得]《ポイント》 この事例は、契約期間を満了して退職する期間契約社員に対し支給された慰労金名目の金員につき、その支払者が給与所得に該当するとして所得税の源泉徴収をしたものの、その支給基準、支給実態からみて、最高裁昭58.9.9第二小法廷判決(民集37巻7号962頁)で示された、退職所得に当たるというための三つの要件を満たしていると判断したものである。
《要旨》 原処分庁は、F社の期間契約社員就業規則によると、F社は、期間契約社員に対する退職金を支給しないこととされていることなどから、慰労金名目で支払われた金員(本件慰労金)に係る所得は給与所得に該当する旨主張する。
しかしながら、ある金員が、「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」に当たるというためには、それが、退職、すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて給付されること、従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有すること、一時金として支払われることの各要件を備えることが必要であると解されるところ、本件慰労金のうち、労働慰労金として支給された金員は、請求人が契約期間を満了して退職するという事実によって支給され、請求人が契約期間における出勤すべき日数の90パーセント以上を出勤し、勤務成績が良好な者に該当するとして、契約期間における勤務日数に応じて一時に支給されたこと、有給休暇手当金として支給された金員は、請求人が契約期間を満了して退職するという事実によって支給され、契約期間中に生じる有給休暇について請求人がこれを取得しなかったことを支給の根拠として一時に支給されたことからすると、本件慰労金は上記ないしの各要件をいずれも満たすものと認められることから、退職所得に該当する。
《参照条文等》 所得税法第30条
《参考判決・裁決》 最高裁昭58.9.9第二小法廷判決(民集37巻7号962頁)
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 契約期間を満了して退職する期間契約社員に対し慰労金名目で支給された金員は、退職により一時に受ける給与というための要件を満たしているから、退職所得に該当するとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(所得税法>所得の種類>退職所得)
- 使用人兼務役員として勤務する会社の適格退職年金制度の廃止に伴い、年金信託契約の受託者から受領した一時金は、所得税法第31条に規定する退職手当等とみなす一時金ではなく一時所得に該当するとした事例
- 請求人が在職中に勤務先の親会社から同社のリストリクテッド・シェア(譲渡等制限付株式)を付与されたことによる所得は、退職所得ではなく、給与所得に当たるとした事例
- 年金受給者が、厚生年金の給付水準の引下げに際し、将来の年金の総額に代えて受給した一時金は、勤務先を退職した年分の退職所得に当たるとした事例
- 契約期間を満了して退職する期間契約社員に対し慰労金名目で支給された金員は、退職により一時に受ける給与というための要件を満たしているから、退職所得に該当するとした事例
- 雇用関係のない従事員会から、退会せん別金の給付に関する事業を廃止することに伴い支給を受けた金員は、退職所得とは認められず、一時所得に該当するとした事例
- 勤務先から、専務取締役であった勤続期間に係る役員退職慰労金として支給された一時金について、請求人が所得税基本通達30−2の(3)に定めるその職務の内容又はその地位が激変した者に該当するとして、退職所得に該当するとした事例
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。