国が担保として徴していた不動産抵当権の一部解除をした場合において、当該物件に抵当権を設定した請求人の強制換価手続に対しては、信義則上、国が交付要求することは許されないとの請求人の主張が排斥された事例
[国税徴収法][交付要求]に関する裁決事例(国税不服審判所)。
裁決事例(国税不服審判所)
1999/06/02 [国税徴収法][交付要求] 請求人は、[1]国税徴収法第85条第1項第2号に該当する事由の有無の判断は、信義則の法理に従い、抵当権設定時を基準とすべきである、[2]請求人の抵当権設定に何ら落ち度はないから、同条の立法趣旨に照らして当然保護されるべきである、[3]滞納国税は法定納期限から16年も経過しているから、その間徴税を放置したことは職務怠慢であり、また、本件交付要求は権利の濫用であると主張する。
しかしながら、[1]国税徴収法第85条第1項第2号の交付要求解除請求の要件の判断時点は、当該交付要求解除請求のときと解するのが相当であり、また、原処分庁が抵当権の一部を抹消したことをもって、請求人に対し、以後交付要求を行わない旨の公的な見解を表示したものとはいえず、信義則の法理を適用する特別の事情が存在したとは認められないこと、[2]同条は、一定の要件を充足した場合に債権者を保護する規定であり、請求人に落ち度がないことをもって本件交付要求解除請求を認めることはできないこと、[3]原処分庁は、納税猶予を認め、猶予期限の確定後は原処分庁において担保物処分の手続を経た上で本件交付要求に至ったことが認められ、交付要求に至る徴収手続に職務怠慢があったとは認められないことから、請求人の主張に理由がない。
平成11年6月2日裁決
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