請求人が滞納法人の株主又は社員と認めるに足る証拠はないとして、国税徴収法第37条の規定に基づく第二次納税義務の納付告知処分を取り消した事例

[国税徴収法][第二次納税義務]に関する裁決事例(国税不服審判所)。

裁決事例(国税不服審判所)

2010/06/22 [国税徴収法][第二次納税義務]

裁決事例集 No.79

 原処分庁は、請求人が本件各滞納法人の株主又は社員である旨主張する。
 しかしながら、本件各滞納法人が所轄税務署長に提出した定款等の記載によれば、請求人が、本件各滞納法人の設立の際、本件各滞納法人に出資したとは認められず、直接的な資料により、請求人が本件各滞納法人の増資を引き受け、又は、出資を譲り受けた事実を認定することもできない。また、同族会社においては、所有と経営の分離が行われていない場合が多いから、役員等が会社を自由に操作している事実が認められる場合には、その事実は、当該役員等が当該会社の出資者であることをうかがわせる重要な間接事実となるが、請求人は、本件各滞納法人が経営する各店舗の売上金を集金した以外には、本件各滞納法人の経営に関与した事実は全く認められないから、請求人が本件各滞納法人を自由に操作していたということはできず、請求人が本件各滞納法人の実質的な出資者であると推認することもできない。さらに、本件各滞納法人が平成19年及び平成20年に提出した法人税申告書の別表二には、請求人が本件各滞納法人の株式又は出資を100%保有している旨記載されているが、本件各滞納法人が平成11年中に提出した法人税申告書の別表二には、株主として、請求人以外の者の氏名が記載され、平成12年から平成18年までの間に提出した法人税申告書の別表二には、請求人が本件各滞納法人の株主又は社員である旨の記載はないから、原処分庁が指摘する2年分の法人税申告書の別表二の記載のみから、請求人が本件各滞納法人の株主又は社員であったと認定することは到底できない。加えて、これら2年分の法人税申告書の決算業務を行った税理士法人の担当者は、だれが株主であるか分からなかったので、資産のオーナーである請求人を出資者とするのが妥当であると判断した旨の答述をするが、請求人が店舗不動産の登記名義人であるということと、本件各滞納法人の出資者がだれかということとは直接関係がないから、請求人が本件各滞納法人の出資者であることの根拠とはなり得ない。
 以上のとおり、請求人が本件各滞納法人の同族会社の判定の基礎となる株主又は社員に該当すると認めるに足る証拠はないから、原処分は国税徴収法第37条第2号の要件を欠く違法な処分であるといわざるを得ず、その全部を取り消すのが相当である。

《参照条文等》国税徴収法第37条

国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
請求人が滞納法人の株主又は社員と認めるに足る証拠はないとして、国税徴収法第37条の規定に基づく第二次納税義務の納付告知処分を取り消した事例

関連するカテゴリ

関連する裁決事例(国税徴収法>第二次納税義務)

  1. 同族会社の判定の基礎となった株主が当該同族会社に無償で貸与していた不動産が、当該同族会社の事業の遂行に欠くことができない重要な財産に当たるとした事例
  2. 滞納法人がその構成員である組合員に対して行った賦課金の返還行為が、国税徴収法第39条の無償譲渡等に当たるとされた事例
  3. 国税徴収法第38条にいう「譲受財産」とは、積極財産のみをいい、消極財産を含まないと解するのが相当であるとした事例
  4. 滞納者の預金口座から出金された金銭が請求人の預金口座に入金されたことは、国税徴収法第39条の無償譲渡には該当しないとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し・平成26年1月7日裁決)
  5. 請求人が受領した滞納会社の売掛金のうち、滞納会社の従業員に対する給与に充てられた部分以外の部分は、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分によるものであるとした事例
  6. 滞納者が行った集合住宅の売却について、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等に該当するとした事例
  7. 請求人が納税者から不動産を譲り受けたことが、国税徴収法第39条に規定する「著しく低い額の対価による譲渡」に当たらないとした事例
  8. 国税徴収法第38条の第二次納税義務の告知処分に至る手続に違法があり、また、納付相談の要請を了解したにもかかわらず、この了解事項を一方的に破棄して告知処分を行ったことは、信義則に反するとの請求人の主張が排斥された事例
  9. 請求人が賃借人から敷金の返還義務を免除されたことが、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分に当たらないとした事例
  10. 滞納者から金銭の贈与を受けたことを理由とする国税徴収法第39条に基づく第二次納税義務の告知処分は相当であるとした事例
  11. 滞納会社が売上除外金から取締役に支出した金員は、社員総会において承認の決議を受けた損益計算書には計上されていないことから、職務執行の対価としての役員報酬には当たらず、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡に当たるとした事例
  12. 連帯納付義務者Lから不動産の贈与を受けた者に対して行われた国税徴収法第39条の規定に基づく第二次納税義務の告知処分が適法であるとした事例
  13. 新株発行による増資は差押処分の処分禁止効には抵触しないとして、増資後の株式総数を基に第二次納税義務の限度額を算定するとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・一部取消し・平成25年12月9日裁決)
  14. 滞納者が受け取るべき信託受益権の譲渡代金の残余金等のうち、滞納者の債務を弁済した後に生じた余剰金は、実質的に滞納者から請求人に対する無償譲渡と認められるとした事例
  15. 債権譲渡の債務者対抗要件が具備されていないから、無価値の債権の代物弁済により債務が消滅したとして国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分があったとはいえないとした事例
  16. 請求人が滞納法人から、不動産売買に係る仲介手数料に相当する債務の免除を受けたとは認められないとした事例
  17. 滞納者を契約者兼被保険者とし、保険金受取人を請求人とする生命保険契約に基づいて死亡保険金を受領した請求人は、国税徴収法第39条の規定により、滞納者が払込みをした保険料相当額の第二次納税義務を負うとした事例
  18. 法人税法上役員賞与としたものを無償譲渡と認めて第二次納税義務を課しても矛盾がないとした事例
  19. 滞納会社の所有する土地持分の上に請求人が建物を新築するに当たり、借地権の無償設定によって国税徴収法第39条にいう利益を受けたものと認定した事例
  20. 請求人と滞納会社が共同して売却した本件不動産(土地は各別に所有、建物は共有)の売却代金について、不動産の持分に応じて配分を受けるのが相当であるから、請求人は受けた利益を限度として滞納国税につき第二次納税義務を負うとした事例

※最大20件まで表示

税法別に税務訴訟事例を調べる

当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。


戦略的に節税するための無料ツール

一括節税計算機
※所得を入力して、税目別に税額を一括比較する
所 得万円 *必須
減少額万円 *任意  設定  消去
[対応税目]*法人税*所得税*消費税*相続税*贈与税*利子所得*配当所得*給与所得*退職所得*譲渡所得(土地)*譲渡所得(株式)*譲渡所得(総合)*一時所得*雑所得(年金)*雑所得(FX等)

*ご利用にあたっては利用規約を必ずご確認ください

このページを他の人に教える


ご意見ご要望をお聞かせ下さい

 過去のご意見ご要望については、ご意見ご要望&回答一覧で確認できます。

利用規約をお読み下さい

 本サイトのご利用にあたっては利用規約を必ずお読み下さい。

広告を募集しています

 本サイトでは掲載していただける広告を募集しております。詳しくは広告掲載をご覧ください。
新着情報 RSS
01/29 生命保険で節税
02/08 所得税の延納(利子税)で節税
09/26 経営セーフティ共済で節税
02/22 役員報酬(事前確定届出給与)で節税
02/19 不動産(再建築費評点基準表)で節税
新着情報を見る
節税対策ブログ
02/13 所得税確定申告で誤りの多い12項目(2019年度版)
01/29 死亡退職金の受取人(役員退職慰労金規程と相続税)
02/22 所得税確定申告で誤りの多い事例とは
02/02 クレジットカードポイント等の税務処理
02/01 ふるさと納税特産品と株主優待の税務処理
節税対策ブログを見る
アクセス数
今日:1,157
昨日:756
ページビュー
今日:3,427
昨日:1,477

ページの先頭へ移動