連帯納付義務者Lから不動産の贈与を受けた者に対して行われた国税徴収法第39条の規定に基づく第二次納税義務の告知処分が適法であるとした事例
[国税徴収法][第二次納税義務][無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務]に関する裁決事例(国税不服審判所)。
裁決事例(国税不服審判所)
2003/04/16 [国税徴収法][第二次納税義務][無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務]相続税法第34条の連帯納付義務については補充性がないことから、連帯納付義務は、第二次納税義務のように本来の納税義務者に対する滞納処分を執行しても徴収すべき額に不足すると認められる場合に限って、納税義務を負担するものではない。すなわち、本来の納税義務者に対する徴収手続と連帯納付義務者に対する徴収手続は本来的には別個の手続である。
そうすると、仮に、税務署長が、本来の納税義務者に対する滞納処分等の徴収手続を適正に行っておれば、本来の納税義務者から滞納に係る相続税を徴収することが可能であったにもかかわらず、税務署長が徴収手続を怠った結果、本来の納税義務者から相続税を徴収することができなくなったという事実があったとしても、その事実は、相続税法第34条第1項の規定によって、各相続人に課されている連帯納付義務の存否又はその範囲に影響を及ぼすものではなく、また、税務署長が、各相続人に対して、連帯納付義務の履行を求めて徴収手続を進めたとしても、これをもって違法ということはできない。
請求人らは、国税の徴収について、民法第504条の規定を準用又は類推適用すべきであると主張するが、相続税法、国税通則法、国税徴収法のいずれにおいても、民法第504条を準用すべきものであるとする規定もなく、類推適用を根拠付ける規定もない。
相続税の連帯納付義務の性格については、その性格を民法上の連帯保証債務に類似するものと解し、本来の納税義務についての時効中断の効力は附従性により連帯納付義務にも及ぶと解するのが相当である。これを本件について見ると、本来の納税義務者Kの国税の徴収権の消滅時効はいまだ完成していないから、連帯納付義務者Lの国税の徴収権の消滅時効も完成しておらず、請求人らの主張には理由がない。
Kは、Lの連帯納付義務を承継した納税義務者でもあり、連帯納付義務と本来の納付義務が同一人に帰することになる。しかしながら、本来の納付義務と重複することとなった連帯納付義務が当然に消滅すると解すべき実定法上の根拠はない。また、本来の納付義務と連帯納付義務が同一人に帰した場合に、連帯納付義務が消滅する場合があり得るとしても、Lの連帯納付義務は、第二次納税義務の基因となる納付義務であり、Lの連帯納付義務を存続させる実益があることからすると、当該連帯納付義務が消滅すると解するのは相当ではない。
国税徴収法第39条の徴収不足が無償譲渡等の処分に「基因する」とは、広く、その処分がなかったならば、徴収不足を生じなかったであろうことをいい、損害賠償請求の場合における「直接の因果関係」よりも広い概念として、当該基因関係を認めるのが相当と解され、また、徴収不足の判定は、第二次納税義務の告知処分をするときの現況によるべきものと解される。
これを本件について見ると、本件贈与がなければ、本件贈与により受けた利益の金額の総額を承継後の滞納国税に充てることが可能であったといえる。そうすると、本件贈与と徴収不足との間に基因関係を認めることができるから、請求人のこの点に関する主張は採用できない。
本件納付通知書の納税者欄には、第二次納税義務の基因となった納付義務を負う者の氏名が記載されるところ、Lは既に死亡しており、Lの連帯納付義務はKに承継されていることから、納付通知書の納税者欄にKの氏名を記載したことは、国税徴収法第32条第1項に照らして適法であり、無効とする重大な瑕疵があるとはいえない。
国税徴収法第39条の規定は、主たる納税者の租税の納期限が経過したこと及び滞納処分を執行しても徴収不足を生じると認められることを第二次納税義務の要件としているものの、主たる納税者に対して実際に徴収手続に着手することを要件とするものではないと解される。
したがって、第二次納税義務の基因となった連帯納付義務について、国税徴収法第39条に規定する要件を満たせば、督促の有無にかかわらず、第二次納税義務者である請求人らに対して、本件告知処分を行うことができることとなる。
登記は、制度上その手続において、真正な、すなわち有効に存立する実質的な関係に基づくものであることが前提とされ、かつ、公の機関によって管理されているから、登記上の所有名義人は反証がない限り当該不動産の所有者と推定することが相当である。本件居宅は、[1]相続により贈与者へ所有権移転登記がされていること、[2]請求人らへ贈与により所有権移転登記がされていることから、被相続人から相続した上で、請求人らに贈与したと認めるのが相当である。
これに対して、請求人は、自らが本件居宅を建築したと主張するが、遺産分割協議書及び本件相続に係る相続税の申告書において、本件居宅は妻が相続する旨の記載があること、請求人らは、本件贈与について贈与税の申告をしていること、並びに請求人が建築したとする請負契約書や新築及び改築費用の資金出所を明らかにする領収書等の証拠書類を提出しないことからすると、本件居宅が請求人に帰属すると認めることはできない。
平成15年4月16日裁決
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