相続税の申告に当たり、相続財産の一部について、相続人がその存在を認識しながら申告しなかったとしても、重加算税の賦課要件は満たさないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2011/05/11 [国税通則法][附帯税][重加算税][隠ぺい、仮装の認定]《ポイント》 この事例は、相続税の申告に当たり、相続財産の一部である被相続人名義の株式について、請求人がその存在を認識しながら申告に至らなかった事情について個別に検討したところ、請求人が当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をしたとまでは認められないとしたものである。
《要旨》 原処分庁は、請求人が、当初申告において計上していなかった被相続人名義の株式(本件株式)を相続財産であると認識していたにもかかわらず、関与税理士に対しその存在を秘匿し、過少な申告額を記載した本件相続税の申告書を作成させ、これを原処分庁に提出したものであるから、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をしたもので、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に当たる旨主張する。
しかしながら、確かに、請求人は、法定申告期限前に本件株式の存在を相続財産として認識していたと推認できるものの、原処分庁の主張する請求人が関与税理士から証券会社の残高証明書を入手するように指示されたにもかかわらず、それに従わなかったこと、請求人が関与税理士から申告書案記載の財産について個々に説明を受けていたにもかかわらず、本件株式の記載漏れを指摘しなかったこと、本件相続税の調査の際、請求人が虚偽答弁を行ったことについては、それぞれ、請求人が、本件相続税の申告に当たって、関与税理士が本件株式を把握するために必要な資料を既に所持しており、改めて提出する必要がないと考えた可能性を否定しえないこと、請求人は、関与税理士から申告書案記載の財産について個々に説明を受けていたとは認められず、また、申告書案に本件株式が相続財産として当然記載されていると誤認したまま、記載内容を十分に確認せず、その誤りに気付かなかったという可能性を否定しえないこと、請求人が虚偽答弁を行ったと認めるに足りる証拠がないことから、これらのことをもって、請求人が当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をしたとまでは認められない。
《参照条文等》 国税通則法第68条
《参考判決・裁決》 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
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