遺留分減殺請求権を行使して取得した宅地を譲渡しても、その譲渡が相続税の法定申告期限の翌日以後2年経過後である場合には、相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例の適用がないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
1999/05/20 [租税特別措置法][所得税法の特例][譲渡所得の特例][特定の事業用資産の買換えの場合等の課税の特例] 請求人は、遺留分減殺請求権を行使して本件宅地を取得したものであるが、遺留分を侵害していた者が相続税法第32条に規定する更正の請求をしたため、遺留分権利者たる請求人も同法第30条に規定する期限後申告を余儀なくされ、その相続税を納付するために本件宅地を譲渡したのであるから、租税特別措置法第39条第1項にいう相続税法第27条第1項の「相続の開始があったことを知った日」は、遺留分減殺請求訴訟の判決が確定した日」と読み替えて租税特別措置法第39条第1項を適用すべきであると主張する。
ところで、相続税法(平成4年法律第16号による改正前のもの。)第27条第1項は、「相続又は遺贈により財産を取得した者は、・・・その相続の開始があったことを知った日の翌日から6月以内」に申告書を提出しなければならないと規定しているところ、この「相続の開始があったことを知った日」とは、相続人が被相続人の自然死又は擬制死亡を覚知することにより、自己のために被相続人の権利義務を包括的に承継し得る地位を取得したことを知った日であり、相続の単純又は限定の承認を行って相続人の地位を確定的に取得した日、あるいは、遺産分割の協議又は調停の成立若しくは審判により、相続人が具体的に相続財産の全部又は一部を取得した日ではないと解されている。
そして、遺留分権利者は、一般の法定相続人と同じく相続の開始により相続財産の一定額を不可侵的に取得し得る地位に立つものであるから、遺留分権利者の相続税の提出期限の起算日についても、一般の相続の場合と同様に考えるべきである。
したがって、遺留分権利者について、相続税法第27条第1項の「相続の開始があったことを知った日」とは、自然死又は擬制死亡を覚知することにより、相続財産の一定額を不可侵的に取得しうる地位に立ったことを知った日と解するのが相当であり、自ら遺留分減殺請求を行ってその遺留分を確定的に確保した日、あるいは、遺留分減殺請求に係る判決が確定しそのことによって具体的な相続財産を取得した日と解するのは相当でない。
本件譲渡は相続税の申告書の提出期限の翌日以後2年(平成6年法律第22号による改正後の措置法では3年。)を経過する日までの間の譲渡に該当しないので、租税特別措置法第39条第1項の適用はない。
平成11年5月20日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
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