所得税更正処分取消請求事件|昭和63(行ウ)2
[所得税法][事業所得][推計課税]に関する行政事件裁判例(裁判所)。
行政事件裁判例(裁判所)
平成6年6月28日 [所得税法][事業所得][推計課税]判示事項
1 推計課税における推計の合理性の意義及びその程度 2 推計による課税処分の取消訴訟において実額の主張をする納税者の主張立証すべき事項 3 畑作農業を営む者の事業所得の金額について,反面調査により把握した作物別作付面積を基に同一税務署管内の類似同業者の作物別の単位面積当たりの平均収入金額,平均雑収入率及び平均所得率を用いて前記事業所得の金額を推計してした所得税の更正が,適法であるとされた事例裁判要旨
1 推計課税は,税負担の公平の見地上,納税者の所得を認識することができる帳簿等の資料等がないからといって課税を放棄できないため,推計の必要性の存在を要件として,実額課税に代替する手段として認められたものと解されるところ,推計の基礎事実等が得られにくい事例において実額課税の場合と同程度の合理性又は立証の程度を要求することはできず,仮に前記基礎事実等を得ることができる事例であったとしても,税務署長に多くの時間と労力をかけて推計の基礎事実や納税者に極めて類似する同業者等を探し出すよう要求することは,所得税法156条の法意に反することになるから,推計の合理性は,税務署長が推計のために容易に入手し得る基礎事実及び統計資料等に照らして,納税者の所得につき近似値を求め得ると認められる程度のもので足りる。 2 推計課税は,実額課税に代替する手段として認められたものであり,その性質上実額の近似値的なものを把握すれば足りるものであるところ,現実の所得が明らかになれば実額によって課税するとの原則に戻り,推計による課税処分は取り消されることになると解すべきであるが,その場合における所得金額の主張立証責任は納税者の側にあると解すべきであり,したがって,納税者は,事業所得の金額について実額を主張するときは,その主張する収入金額が収入のすべてであること及びその主張する必要経費がその年に発生確定し,事業との関連性を有することを立証しなければならないというべきである。 3 畑作農業を営む者の事業所得の金額について,反面調査に基づいて把握した作物別作付面積を基に同一税務署管内の類似同業者の作物別の単位面積当たりの平均収入金額,平均雑収入率及び平均所得率を用いて前記事業所得金額を推計してした所得税の更正につき,推計の必要性が認められ,かつ,税務署長が容易に入手し得る基礎資料及び統計資料等に照らして所得の近似値を求め得る程度の推計の合理性も認められるとして,前記更正が適法であるとされた事例- 裁判所名
- 釧路地方裁判所
- 事件番号
- 昭和63(行ウ)2
- 事件名
- 所得税更正処分取消請求事件
- 裁判年月日
- 平成6年6月28日
- 分野
- 行政
- 全文
- 全文(PDF)
- 裁判所:行政事件裁判例
- 所得税更正処分取消請求事件|昭和63(行ウ)2
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