贈与財産である取引相場のない株式を純資産価額方式で評価する場合において、当該株式の発行法人が有する営業権の価額は財産評価基本通達の規定により評価することが相当であるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2008/10/23 [相続税法][財産の評価][土地及び土地の上に存する権利] 財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)に定める営業権の評価方法の合理性について検討すると、まず、平均利益金額の算定に当たって、所得税法及び法人税法の定めに従って算出した「所得の金額」を基としているのは、各企業の主観に基づく会計処理基準によって算出された利益によることなく、各企業について統一的に所得金額の計算基準を定めている所得税法及び法人税法によって計算された所得によることとし、算定方法の客観性を確保するためと解される。次に、平均利益金額から一律50%減じることは、過去の収益に基づく平均利益金額から将来の収益を推算する方法を採用していることから、将来における競争相手の出現、需給の変化等の企業がもつ将来における危険率を見込んだ評価の安全性に対する配慮であると認められる。さらに、企業者報酬を減ずることは、企業の規模に応じて適当と認められる企業者報酬を控除することで、客観的に見て企業者の労力によってもたらされる収益を除外するものと解され、総資産価額に基準年利率を乗じた金額を控除することは、投下資本の働きによる収益を除外するためのものであるから、これによって算出された超過利益金額は、将来の超過収益力を示すものと認められる。したがって、この超過利益金額を、財産評価一般に採用される一般的な利回りである基準年利率を基に資本還元した価額は、営業権の価額を示すものと認められる。更に、課税時期を含む年の前年の所得の金額が低い場合には営業権の価額をこの金額により評価することとされており、評価の安全性に配慮していることが認められ、当審判所も評価通達に定める方法を相当と認める。
請求人らは、評価通達に定める営業権の評価方法は、その計算要素である営業権の持続年数が異常に長いこと、平均利益金額を求める期間が3年と短いこと、総資産価額に乗ずる率が低いこと、基準年利率を基とした複利年金現価率は妥当ではないことから、所要の補正を行った上で本件営業権の評価を行い、本件株式の時価を評価すると1株当たりの価額は1,817円となり、原処分庁算定の価額は時価を超えるから、本件の場合、評価通達により難い特別な事情がある旨主張する。しかしながら、本件営業権の評価に当たって、評価通達において定められた各計算要素について請求人らが主張する補正をすべき理由はなく、請求人らの主張する補正をして算出した価額が本件株式の時価であるとはいえない。したがって、評価通達の定めによらないことが正当と認められるような特別な事情がある場合とはいえず、請求人らの主張には理由がない。
平成20年10月23日裁決
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