法第30条《退職所得》関係|所得税法
基本通達(国税庁)
(退職手当等の範囲)
30−1 退職手当等とは、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われることとなった給与をいう。したがって、退職に際し又は退職後に使用者等から支払われる給与で、その支払金額の計算基準等からみて、他の引き続き勤務している者に支払われる賞与等と同性質であるものは、退職手当等に該当しないことに留意する。
(引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするもの)
30−2 引き続き勤務する役員又は使用人に対し退職手当等として一時に支払われる給与のうち、次に掲げるものでその給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるものは、30−1にかかわらず、退職手当等とする。(昭51直所3−1、直法6−1、直資3−1、平16課個2−23、課資3−7、課法8−8、課審4−33改正)
(1) 新たに退職給与規程を制定し、又は中小企業退職金共済制度若しくは確定拠出年金制度への移行等相当の理由により従来の退職給与規程を改正した場合において、使用人に対し当該制定又は改正前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与
(注)
1 上記の給与は、合理的な理由による退職金制度の実質的改変により精算の必要から支払われるものに限られるのであって、例えば、使用人の選択によって支払われるものは、これに当たらないことに留意する。
2 使用者が上記の給与を未払金等として計上した場合には、当該給与は現に支払われる時の退職手当等とする。この場合において、当該給与が2回以上にわたって分割して支払われるときは、令第77条((退職所得の収入の時期))の規定の適用があることに留意する。
(2) 使用人から役員になった者に対しその使用人であった勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与(退職給与規程の制定又は改正をして、使用人から役員になった者に対しその使用人であった期間に係る退職手当等を支払うこととした場合において、その制定又は改正の時に既に役員になっている者の全員に対し当該退職手当等として支払われる給与で、その者が役員になった時までの期間の退職手当等として相当なものを含む。)
(3) 役員の分掌変更等により、例えば、常勤役員が非常勤役員(常時勤務していない者であっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められるものを除く。)になったこと、分掌変更等の後における報酬が激減(おおむね50%以上減少)したことなどで、その職務の内容又はその地位が激変した者に対し、当該分掌変更等の前における役員であった勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与
(4) いわゆる定年に達した後引き続き勤務する使用人に対し、その定年に達する前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与
(5) 労働協約等を改正していわゆる定年を延長した場合において、その延長前の定年(以下この(5)において「旧定年」という。)に達した使用人に対し旧定年に達する前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与で、その支払をすることにつき相当の理由があると認められるもの
(6) 法人が解散した場合において引き続き役員又は使用人として清算事務に従事する者に対し、その解散前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与
(使用人から執行役員への就任に伴い退職手当等として支給される一時金)
30-2の2 使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る。)からいわゆる執行役員に就任した者に対しその就任前の勤続期間に係る退職手当等として一時に支払われる給与(当該給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上当該給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるものに限る。)のうち、例えば、次のいずれにも該当する執行役員制度の下で支払われるものは、退職手当等に該当する。(平19課法9−9、課個2−20、課審4−32追加)
(1) 執行役員との契約は、委任契約又はこれに類するもの(雇用契約又はこれに類するものは含まない。)であり、かつ、執行役員退任後の使用人としての再雇用が保障されているものではないこと
(2) 執行役員に対する報酬、福利厚生、服務規律等は役員に準じたものであり、執行役員は、その任務に反する行為又は執行役員に関する規程に反する行為により使用者に生じた損害について賠償する責任を負うこと
(注) 上記例示以外の執行役員制度の下で支払われるものであっても、個々の事例の内容から判断して、使用人から執行役員への就任につき、勤務関係の性質、内容、労働条件等において重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特別の事実関係があると認められる場合には、退職手当等に該当することに留意する。
(受給者が掛金を拠出することにより退職に際しその使用者から支払われる一時金)
30−3 在職中に使用者に対し所定の掛金を拠出することにより退職に際して当該使用者から支払われる一時金は、退職手当等とする。この場合において、その退職手当等の収入金額は、その一時金の額から受給者が拠出した掛金(支給日までにその掛金の運用益として元本に繰り入れられた金額を含む。)の額を控除した金額による。(昭63直法6−1、直所3−1、平14課個2−22、課資3−5、課法8−10、課審3−197改正)
(注) 上記後段のかっこ内の掛金の運用益として元本に繰り入れられた金額とは、各人ごとの掛金の額が区分経理されている場合において、当該掛金に対応する運用益としてその者に係る一時金の原資に繰り入れられたものをいい、当該運用益に係る所得は、当該掛金が令第2条第1号《預貯金の範囲》に掲げる貯蓄金として管理されている場合にはその繰り入れられた時の利子所得とし、その他の場合にはその繰り入れられた時の法第35条第2項第2号《雑所得》に規定する雑所得として課税することとなる。
(過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金に代えて支払われる一時金)
30−4 法第35条第3項第2号に規定する過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金の受給資格者に対し当該年金に代えて支払われる一時金のうち、退職の日以後当該年金の受給開始日までの間に支払われるものは退職手当等とする。
なお、年金の受給開始日後に支払われる一時金であっても、将来の年金給付の総額に代えて支払われるものは、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に掲げる年分の退職手当等として差し支えない。(昭63直法6−1、直所3−1追加)
(1) 退職の日以後当該退職に基因する退職手当等の支払を既に受けている者に支払われる当該一時金 当該退職手当等のうち最初に支払われたものの支給期の属する年分
(2) (1)以外の当該一時金 当該一時金の支給期の属する年分
(注)
1 年金の受給開始日後に支払われる一時金で、上記なお書に該当しないものは、法第35条第3項第2号に規定する公的年金等に該当する。
2 年金の受給開始日までの間に支払われる一時金で退職手当等とされるものについては、令第77条《退職所得の収入の時期》の規定が適用されることに留意する。
(解雇予告手当)
30−5 労働基準法第20条《解雇の予告》の規定により使用者が予告をしないで解雇する場合に支払う予告手当は、退職手当等に該当する。(昭63直法6−1、直所3−1改正)
(退職手当等の支払金額の計算の基礎となった期間と勤続年数との関係)
30−6 令第69条第1項第1号本文《退職所得控除額に係る勤続年数の計算》の勤続年数は、当該退職手当等の支払者(その者が相続人である場合にはその被相続人を含み、その者が合併後存続する法人又は合併により設立された法人である場合には合併により消滅した法人を含み、その者が法人の分割により資産及び負債の移転を受けた法人である場合にはその分割により資産及び負債の移転を行った法人を含む。)の下においてその退職手当等の支払の基因となった退職の日まで引き続き勤務した期間により計算するのであるから、退職手当等の支払金額の計算の基礎となった期間がその引き続き勤務した期間の一部である場合又はその期間に一定の率を乗ずるなどにより換算をしたものである場合であっても、同号本文の勤続年数は、その引き続き勤務した実際の期間により計算することに留意する。(昭63直法6−1、直所3−1改正、平13課法8−6、課個2−17、課審3−89改正)
(長期欠勤又は休職中の期間)
30−7 令第69条第1項第1号に規定する勤務した期間には、長期欠勤又は休職(他に勤務するためのものを除く。)の期間も含まれる。(昭63直法6−1、直所3−1改正)
(引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とされるものに係る勤続年数)
30−8 30−2により退職手当等とされる給与に係る勤続年数は、当該給与の計算の基礎とされた勤続期間の末日において退職したものとして計算するものとする。(昭63直法6−1、直所3−1改正)
(日々雇い入れられる期間)
30−9 法第185条第1項第3号《日額表丙欄の適用を受ける給与等》に掲げる給与等の支払を受けていた期間は、令第69条第1項第1号に規定する「引き続き勤務した期間」及び「他の者の下において勤務した期間」に含まれない。(昭63直法6−1、直所3−1改正)
(前に勤務した期間を通算して支払われる退職手当等に係る勤続年数の計算規定を適用する場合)
30−10 令第69条第1項第1号ロ及びハただし書の規定は、法律若しくは条例の規定により、又は令第153条《退職給与規程の範囲》若しくは旧法人税法施行令第105条《退職給与規程の範囲》に規定する退職給与規程において、他の者の下において勤務した期間又は前に支払を受けた退職手当等の支払金額の計算の基礎とされた期間(以下30-11においてこれらの期間を「前に勤務した期間」という。)を含めた期間により退職手当等の支払金額の計算をする旨が明らかに定められている場合に限り、適用するものとする。(昭63直法6−1、直所3−1、平15課個2−23、課資3−7、課法8−11、課審4−37改正)
(前に勤務した期間の一部等を通算する場合の勤続年数の計算)
30−11 令第69条第1項第1号ロ及びハただし書に規定する場合において、退職手当等の支払金額の計算の基礎とする期間のうちに、前に勤務した期間のうちの一部の期間又は前に勤務した期間に一定の率を乗ずるなどにより換算をした期間を含めて計算するときは、それぞれ当該一部の期間又は当該前に勤務した期間を同号本文に規定する勤続期間(以下30−13において「勤続期間」という。)に加算して勤続年数を計算するものとする。(昭63直法6−1、直所3−1改正)
(復職等に際し退職手当等を返還した場合)
30−12 既往における退職に際し退職手当等の支払を受けた場合であっても、その後復職又は再就職に際し、その復職又は再就職のための条件として定められたところに従い、当該退職手当等の全額を当該退職手当等の支払者に返還したときは、令第69条第1項第1号ハに規定する「前に退職手当等の支払を受けたことがある場合」に該当しないものとする。(昭63直法6−1、直所3−1改正)
(勤続年数の計算の基礎となる期間の計算)
30−13 勤続期間、令第69条第1項第1号イ若しくはロの規定により加算する期間又は同号ハただし書の規定により含まれるものとされる期間は、それぞれ暦に従って計算し、1月に満たない期間は日をもって数え、これらの年数、月数及び日数をそれぞれ合計し、日数は30日をもって1月とし、月数は12月をもって1年とする。
同項第2号に規定する組合員等であった期間についても同様とする。(昭63直法6−1、直所3−1改正)
(その年に支払を受ける2以上の退職手当等のうちに前の退職手当等の計算期間を通算して支払われるものがある場合の控除期間)
30−14 その年に支払を受ける2以上の退職手当等のうちに、その支払金額がその年の前年以前に支払を受けた退職手当等の支払金額の計算の基礎とされた期間(以下この項において「前の退職手当等の計算期間」という。)を含めた期間により計算されたものがある場合には、令第70条第1項第1号《退職所得控除額の計算の特例》に掲げる金額の計算の基礎となる同号に規定する期間(以下この項において「控除期間」という。)の計算については、次による。(昭63直法6−1、直所3−1、平元直所3−14、直法6−9、直資3−8改正)
(1) 一の退職手当等に係る前の退職手当等の計算期間のうちに、他の退職手当等に係る令第69条第1項第3号ただし書に規定する勤続期間等(当該他の退職手当等の支払金額が前の退職手当等の計算期間を含めた期間により計算されたものである場合には、当該前の退職手当等の計算期間を除く。)と重複する部分がある場合には、当該重複する部分の期間は控除期間に含まれないものとする。
(2) 一の退職手当等に係る前の退職手当等の計算期間((1)により控除期間に含まれないものとされる期間を除く。以下この項において同じ。)のうちに他の退職手当等に係る前の退職手当等の計算期間と重複する部分がある場合には、一の退職手当等に係る前の退職手当等の計算期間に、他の退職手当等に係る前の退職手当等の計算期間のうち当該重複する部分以外の期間を加算した期間により控除期間を計算するものとする。
(注) したがって、図のように、同一年中においてA、B、C3社から支払を受ける退職手当等の支払金額が、それぞれ前の退職手当等の計算期間(図の斜線で表示した期間)を含めた期間により計算したものである場合には、上記(1)によりA′+C′の期間は控除期間に含まれないこととなり、(2)によりA+B+Cの期間が控除期間となる。
(障害による退職に該当する場合)
30−15 次に掲げる場合は、障害者に該当することとなったことに基づいて退職したものでないことが明らかな場合を除き、法第30条第5項第3号に掲げる場合に該当するものとする。(昭63直法6−1、直所3−1、平24課法9−6、課個2−44、課審5−40改正)
(1) 障害者に該当することとなった後一応勤務には復したが、平常の勤務に復することができないままその勤務に復した後おおむね6月以内に退職した場合(常勤の役員又は使用人が非常勤の役員又は使用人となったことにより退職手当等の支払を受け、常勤の役員又は使用人としては退職したと同様の状態となった場合を含む。以下この項において同じ。)
(2) 障害者に該当することとなった後一応平常の勤務には復したが、その勤務に耐えられないで、その勤務に復した後おおむね2月以内に退職した場合
出典
国税庁ホームページ http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/01.htm
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