土地改良事業の事業費を捻出するために集合換地した土地を譲渡した場合の課税関係|譲渡所得
質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
納税者Aほか14名は、その所有する水田、池沼等計15ヘクタールについて、認可を受けて数人施行体方式による土地改良事業を行っているところです。この土地改良に伴う総事業費15億3千万円(補助金の対象となりません。)を捻出するため、共同減歩により集合換地した土地3ヘクタール(便宜上代表者であるAほか数名の名義とします。)を約17億円で譲渡し、これに充てる予定ですが、この譲渡に係る課税関係(事業費の扱いを含みます。)はどのようになるのでしょうか。
【回答要旨】
1 事業費捻出のための集合換地を譲渡した場合の課税関係について
土地改良事業は、土地区画整理事業のような保留地制度はなく、したがって、照会事例における譲渡は、従前地の所有者に換地された土地を譲渡したものに過ぎず、一般の譲渡所得として課税の対象となります。この場合、譲渡する集合換地が従前地の所有者の共同減歩によりなされたものであり、また、譲渡代金が土地改良に伴う総事業費に充てられる以上、譲渡に係る集合換地の名義の如何にかかわらずその所得は受益者であるAほか14名に帰属するものと考えられるため、各人の所得として譲渡所得の計算を行うことになります。
なお、各人の譲渡収入金額は、土地改良事業の対象となった各人の所有土地の価額の比等合理的な基準であん分して計算することになります。
2 事業費の扱いについて
土地改良事業に伴う事業費(補助金交付額控除後)は、通常、受益者が受益者負担金(賦課金)として10年から20年の期間にわたり毎年負担していくケースが一般的であり、これを前提に所得税においては賦課金についての所得計算上の必要経費の取扱いを定めています。すなわち、土地改良事業費(補助金交付額控除後)の賦課金を、その内容に応じ、永久資産取得費対応部分(事業費のうち土地改良施設の敷地等の土地の取得費及び農用地の敷地・造成に要した部分)、減価償却資産及び公道その他一般の用に供される道水路の取得費対応部分(繰延資産該当部分)及び維持管理費に相当する部分に区分の上、各受益者の所得計算上のうち償却費相当額及びについてはその年分の農業所得の必要経費に算入し、については土地の取得価額を構成するものとして必要経費に算入しないこととしています(所基通37-8、昭43.1.30付直所4-1通達参照。)。
この取扱いは、事業費の全額を一括して支出する場合においても適用すべきものであり、その事業費のうちの農用地の整地・造成に要した部分の金額については、その土地(従前地)の取得価額に算入されることとなり、従前地の取得価額として取得価額引継ぎ規定の租税特別措置法第33条の3第1項、第33条の6により換地に引き継がれます。その結果、この農用地の整地・造成に要した部分の金額のうち譲渡する集合換地に対応する部分については、譲渡所得の計算上取得費として控除されることになります。
次にの費用については、上記取扱いにより繰延資産に該当することになりますが、照会事例のように、土地改良事業終了後ただちに事業費捻出のために換地の一部を譲渡する場合には、この「繰延資産該当部分」の費用も従前地(換言すれば換地)の価額等に対応して課されている以上、当該「繰延資産該当部分」の費用のうちの譲渡土地に対応する部分については、当該譲渡所得の金額の計算上譲渡費用に算入すべきものとして取り扱うのが相当です(換地処分により取得した土地の全部を譲渡した場合には、繰延資産とされた費用のうちまだ必要経費に算入されていない部分の金額は、資産の譲渡に関連する資産損失として譲渡所得の計算上譲渡費用とされることになりますから(所法51、所令140、所基通33-8)、換地の一部の譲渡であっても譲渡土地に対応する部分の繰延資産とされる費用についても同様に取り扱うのが合理的です。)。
【関係法令通達】
所得税法第51条
所得税法施行令第140条
所得税基本通達37-8、33-8
昭和43年1月30日付直所4-1ほか1課共同「土地改良事業のために支出する受益者負担金に対する所得税の取扱いについて」
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/joto/03/06.htm
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