ゴルフ会員権の預託金の一部が切り捨てられた場合の取扱い|法人税
質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
ゴルフ場経営会社につき民事再生法の規定による再生計画認可の決定が行われ、預託金の一部が切り捨てられる場合、そのゴルフ場の会員権を有する法人は、その事実が生じた事業年度において、その切り捨てられた金額を貸倒損失として計上することができますか。
【回答要旨】
預託金の一部が切り捨てられ、法律的に債権の一部が消滅した場合には、その切り捨てられた部分の金額については、原則として、切捨ての事実が生じた事業年度において貸倒損失として損金の額に算入されます。
ただし、会員がゴルフ会員権を預託金の額面金額以下で取得している場合は、貸倒損失に計上できる金額は、帳簿価額と切捨て後の預託金の金額との差額を限度とします。
(理由)
金銭債権の一部が更生計画認可の決定や再生計画認可の決定によって切り捨てられた場合には、切り捨てられた金額は、その事実が生じた事業年度において貸倒損失として損金算入されます(法人税基本通達9−6−1(1))。
ゴルフ会員権は、会員契約の解除がなければ預託金返還請求権(金銭債権)に転換しません。再生手続は経営の継続が前提となっているので、通常、会員契約は解除されることはないため、認可決定により預託金の一部が切り捨てられたとしても、金銭債権の性格を有しないゴルフ会員権について貸倒損失を計上することは認められないとも考えられます。
しかしながら、会員契約を解除しなければゴルフ会員権が金銭債権と認められないのは、契約上「預託金は、据置期間経過後、退会を条件に返還請求することができる」とされているからであって、契約自由の原則の下では、当事者の合意により、契約継続中のある時点で預託金の一部を返還又は切り捨てるという契約に変更することは可能です。
すなわち、再建型の倒産手続などによって預託金の一部切捨てが行われた場合も、契約変更により、預託金返還請求権の一部が金銭債権として顕在化した上で、その一部が切り捨てられたとみることができます。
また、預託金の一部切捨てという事実は、契約の当事者間に存在した債権・債務関係が法律的に消滅することであり、ゴルフ場経営会社はこのことにより債務免除益を計上することになります。このような当事者間の契約上の債権・債務関係が変更されたという事実を踏まえれば、債権者においても、その消滅した債権に相当する貸倒損失を容認することが相当であると考えます。
したがって、預託金の一部が切り捨てられた場合には、会員が従来どおりゴルフ場施設を利用できても、その切り捨てられた部分の金額については貸倒損失の計上が認められると解することが相当と考えられます。
〔預託金の一部が切り捨てられた場合の例〕
民事再生法の規定による再生計画認可の決定により預託金の一部(500万円)が切り捨てられ、額面1,500万円とされた。
【関係法令通達】
法人税法第22条第3項
法人税基本通達9-6-1(1)
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/20/08.htm
関連する質疑応答事例(法人税)
- 特定調停において将来の利率の引下げが行われた場合
- 事業規模要件における「これらに準ずるもの」
- 企業再生税制の対象となる私的整理とそれ以外の私的整理における税務上の取扱いの違い
- 株式交換契約の承認を受けるための株主総会の日に任期満了に伴い取締役が退任した場合の特定役員継続要件について
- 完全支配関係のある法人間でリース取引を行った場合の譲渡損益の計上について
- 適格現物分配による資本の払戻しを行った場合の税務上の処理について
- いわゆる「クロスボーダーの三角合併」により外国親法人株式の交付を受ける場合の課税関係
- 特定資産の買換えの場合の譲渡経費の範囲等
- 代理店契約の破棄を理由に支払拒絶を受けている債権
- 解散後引き続き役員として清算事務に従事する者に支給する退職給与
- 保証機関による保証のある長期棚上げ債権に対する貸倒引当金の繰入れ
- 臨海工業地帯の赤松枯損被害に関する企業負担金
- 役員に対する歩合給(定期同額給与)
- 地方税の予納額の損金算入時期
- 社会保険診療に係る経費の額(寄附金の損金不算入額)
- アパートの壁紙の張替費用
- 試験研究費に含まれる人件費の範囲
- 恒久的施設を有する外国法人の未収利息に係る所得税額控除
- 単独新設分割における「同一の者による完全支配関係」の判定について
- 大口の債権者(親会社)だけでなく一般の(小口)債権者も債権放棄する場合
項目別に質疑応答事例を調べる
当コンテンツは、国税庁ホームページ利用規約に基づき、国税庁:質疑応答事例のデータを利用して作成されています。