賃貸借契約の中途解約に伴い賃借人に対し返還不要となった敷金及び建設協力金に係る所得は、3年以上の期間の不動産所得の補償に当たらないから臨時所得に該当せず、平均課税は適用されないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2007/03/12 [所得税法][税額の計算] 請求人は、解約合意書に補償対象期間の具体的な記載はないものの、賃貸借契約書には契約期間が明記されていることから賃貸借契約の終期までの残存期間である9年9か月を本件返還不要敷金等が補償の対象としているとみるべきである旨主張する。
しかしながら、臨時所得の範囲として、所得税法施行令第8条第3号は、不動産貸付業務に係る「3年以上の期間の不動産所得の補償として受ける補償金に係る所得」と規定しているところ、所得の補償とは、中途解約に伴い生じた逸失利益、すなわち不動産貸付業務を継続すれば得られたであろう所得の額を補償するものであり、その所得を得るために継続して生ずる費用、例えば、減価償却費、租税公課等の費用の額を併せて補償することが必要であると解するのが相当であるから、所得の額と費用の額の合計額、すなわち収入金額に相当する金額を補償して初めて所得の補償といえる。
これを本件についてみると、本件返還不要敷金等は、違約金名目ではあるが、その実質は、解約後の収益補償として支払われるもの及び解約に伴う諸費用の実費弁償として支払われるものから成っていると考えられるから、本件返還不要敷金等に係る所得が、臨時所得となる3年以上の期間の補償に該当するか否かを判断するためには、本件返還不要敷金等の金額のうち、上記に係る金額について、1年当たりの収入金額に相当する金額で除して補償対象期間を算定するのが合理的であると認められる。
そこで、本件返還不要敷金等の金額の全額を上記に係る金額と仮定して、本件返還不要敷金等の金額(18,111,800円)を1年当たりの収入金額に相当する金額(9,864,792円(中途解約時の月額賃貸料822,066円×12月))で除して補償対象期間を計算すると、約1年10か月となり、3年以上の期間の不動産所得の補償には当たらない。したがって、本件返還不要敷金等に係る所得は臨時所得に該当しないことになるため、平均課税の方法により所得税の額を計算することはできない。
平成19年3月12日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
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