外貨建取引により取得及び譲渡した財産に係る譲渡所得の金額の計算上、外貨建てで算出した譲渡所得の金額を譲渡時の為替相場で円換算することは相当でないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2010/06/28 [所得税法][外貨建取引の換算] 請求人が外国に所在する土地等を譲渡したことに係る譲渡所得の金額について、請求人は、当該土地等の取得及び譲渡の各取引は外貨によって行っており、当該土地等の取得から譲渡までの間、円と外貨との交換が行われていないことから、本件において所得税法第57条の3の規定は適用されないこと、並びに当該土地等の取得時及び譲渡時の各為替相場をもって取得価額及び譲渡価額をそれぞれ円換算するという原処分庁の採用した方法によれば、実現していない為替差益に課税することとなって許されないことなどを理由に、当該譲渡所得の金額は、外貨建てで算出した譲渡所得の金額を当該譲渡時の為替相場によって円換算して算出すべきである旨主張する。
しかしながら、譲渡所得に対する課税は、資産が譲渡によって保有者の支配を離れるのを機会に、その保有期間中の増加益、すなわち、当該資産の取得時と譲渡時の客観的価額との増差分を清算して課税しようとするものであり、これらの価額の算出に当たり、国内法である所得税法はその計算を円により行うことを前提としていることから、総収入金額又は取得費等の中に外貨で支払が行われる外貨建取引が含まれている場合には、当該取得時から当該譲渡時までの間に円と外貨との交換が行われていたか否かにかかわらず、当該外貨建取引の額について、当該取引を行った時における為替相場で円換算した上で計算するのが相当であり、所得税法第57条の3の規定はこの円換算方法について法令上明確化したものと解される。また、このような円換算によって算出した当該譲渡所得の金額には必然的に為替差益が含まれるところ、当該為替差益は、当該土地等の譲渡によって所得として実現したと解するのが相当である。
《参照条文等》所得税法第33条、第38条、第57条の3所得税基本通達57の3−2
平成22年6月28日裁決
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