過誤納金全額を請求人に還付しながら、その2年後に延滞税の督促処分をしたことは信義則に反するとの請求人の主張に対して、請求人が特段の不利益を受けたわけではないとして、これを排斥した事例
裁決事例(国税不服審判所)
2000/05/24 [国税通則法][不服審査] 国税通則法第37条第1項は、納税者がその国税を納期限までに完納しない場合には、税務署長は、その納税者に対し、督促状によりその納付を督促しなければならない旨規定する。
ところで、本件延滞税の額は、本件相続税の法定納期限の翌日である平成8年2月20日から、本件修正申告に係る相続税の納期限である同年11月6日までの期間の日数261日に応じ、当該修正申告により納付すべき本税の額380,000円(ただし、国税通則法第118条第3項の規定により10,000円未満の端数を切り捨てた後の金額)に年7.3%の割合を乗じて計算した19,800円(ただし、同法第119条第4項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後の金額)であること、そして、上記納期限を経過した後の平成11年6月25日現在、この19,800円の全額が未納であったことが認められるから、当該金額について同日付でなされた本件督促処分は適法ということになる。
もっとも、請求人は、国税通則法第57条第1項の規定によれば、原処分庁は本件過誤納金を本件延滞税に充当すべきところ、これに反して当該過誤納金の全額を請求人に還付しながら、それから2年も経過した後に本件督促処分をしたのであって、このことは信義則に反する旨主張する。
確かに、国税通則法第57条第1項は、税務署長は、還付金又は国税に係る過誤納金(以下、「還付金等」という。)がある場合において、その還付を受けるべき者につき納付すべきこととなっている国税があるときは、還付に代えて、還付金等をその国税に充当しなければならない旨規定するところ、請求人には、上記のとおり、平成9年9月18日現在、納付すべきこととなっている本件延滞税があったのであるから、原処分庁としては、本件誤納金を本件延滞税に充当すべきであり、にもかかわらず、当該過誤納金を請求人に還付したことは上記規定に反すると言わざるを得ないのであるが、過誤納金の還付と督促処分とは別個のものであるから、当該還付が違法に行われたからといって、本件督促処分が当然に違法、不当となるわけではない。
また、信義則が租税法律関係にも適用される法原則であるとしても、本件過誤納金を本件延滞税に充当することなく、これを請求人に還付したからといって、これをもって、原処分庁が、当該延滞税の納付を督促しない旨を公的に表明し確約したものということはできないし、請求人も、本件督促処分によって、本来納付すべき本件延滞税を納付しなければならないというにすぎず、当該延滞税の納付の督促はないと信頼し、これに基づいて何らかの行為をしたために特段の不利益を受けたわけでもないのであるから、本件においては、租税法律主義の原則や納税者の平等、公平の要請をおいてまで、請求人の利益を保護すべき特段の事情はないというべきである。
したがって、請求人の主張には理由がない。
平成12年5月24日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 過誤納金全額を請求人に還付しながら、その2年後に延滞税の督促処分をしたことは信義則に反するとの請求人の主張に対して、請求人が特段の不利益を受けたわけではないとして、これを排斥した事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(国税通則法>不服審査)
- 債権差押処分に対して、被差押債権が請求人に帰属しないことを理由とする審査請求は、原処分の取消しを求めることに法律上の利益を有しないとして却下した事例
- 審査請求に係る審理の対象は客観的に存在していた本件事業年度の法人税の課税標準又は税額との比較における本件更正処分に係るそれらの多寡であるから、請求人が原処分の取消し(申告額を超えない部分を除く。)を求める理由として過大申告を主張することは許されるとした事例
- 贈与税についての主たる課税処分について、その連帯納付義務者に不服申立適格があるとした事例
- 差押債権の第三債務者には債権差押えの取消しを求める法律上の利益がないとした事例
- 更正の申出に対してなされた減額の更正処分に対する審査請求は審査請求の利益を欠き不適法であるとした事例(平成22年分の所得税の更正処分及び無申告加算税の賦課決定処分・棄却、却下・平成25年12月19日裁決)
- 課税処分に対する審査請求中に行われた差押処分が適法であるとした事例
- 審査請求人の主張事由は、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由とするものであるとして、その主張を排斥した事例
- 国税通則法第105条第1項にいう換価には債権の取立て及び配当を含まないものとした事例
- 国税還付金の振込通知は国税に関する法律に基づく処分に当たらないとした事例
- 請求人が不在の場合に請求人の勤務先へ郵便物が転送されるように手続をしていた場合、請求人が原処分に係る通知を受けた日は、原処分に係る通知書が請求人の勤務先に配達された日となり、その翌日から2か月を経過した日にした異議申立ては法定の不服申立期間を経過した後にされたものであるとした事例
- 請求人の異議申立ては、不服申立期間の経過後になされた不適法なものであるから、国税通則法第75条第3項の規定により、本件審査請求も不適法であるとした事例
- 所有権のない者からの公売処分等に対する審査請求を不適法とした事例
- 無申告加算税を賦課決定すべきところ誤って過少申告加算税を賦課したため、これを零円とする変更決定処分をした後、改めて無申告加算税の賦課決定処分を行った場合に、変更決定前の過少申告加算税の賦課決定処分について異議申立てがされているときには、無申告加算税の賦課決定処分について異議申立てをせずに審査請求をすることができる「正当な理由」があるとした事例
- 二次相続に係る本件更正処分は、一次相続に係る裁決における取消し理由と同じ理由で行なわれたものではなく、また、一次相続に係る処分とは別個の二次相続に係る処分であるから違法ではないとした事例
- 委託売却による売却通知が処分に当たることを前提に、不服申立ての利益がないことを理由に審査請求を却下した事例(委託売却による売却通知処分・却下・平成27年4月8日裁決)
- 債権差押処分の名あて人である請求人は不服申立適格を有するが、差押処分の対象となった債権が自己に帰属しない旨の主張は、自己の法律上の利益に関係のない違法をいうものであり理由がないとした事例
- 原処分の取消しを求める不服申立てが処分の無効を理由とするものであっても、不服申立期間を遵守しなければならないとした事例
- 過誤納金全額を請求人に還付しながら、その2年後に延滞税の督促処分をしたことは信義則に反するとの請求人の主張に対して、請求人が特段の不利益を受けたわけではないとして、これを排斥した事例
- 新賃借人が旧賃借人の敷金を承継することを賃貸人が承諾した等の特段の事情がある場合、敷金返還請求権は新賃借人に承継され、新賃借人が目的物を明け渡した時に、新賃借人に対する被担保債権を控除した残額について発生するところ、原処分庁は敷金返還請求権の取立てを完了していることから、差押処分は消滅しているとした事例(各敷金返還請求権の各差押処分・却下・平成26年4月23日裁決)
- 申告内容と齟齬する事由を取消事由として主張することは許されるとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。