請求人は、確定申告に係る一連の手続について兄に包括的に委任していたというべきであり、その委任の効力は、その後の修正申告にも及ぶと解すべきであるから、当該確定申告及び当該修正申告は有効と認められるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2010/08/23 [国税通則法][納付義務の確定] 納税申告は、原則として納税義務者本人が申告書を提出して行うこととされているから、納税義務者以外の者が、本人の承諾なく勝手に納税義務者の申告書を作成し、提出した場合には、その納税申告は無効であると解される。もっとも、納税義務者以外の者が申告書を作成し提出した場合であっても、その者が、納税義務者から明示又は黙示に当該申告行為をする権限を与えられている場合は、その納税申告は有効であると解される。
請求人は、あらかじめ兄が用意し所得金額等が記載された本件確定申告書に自ら署名しており、本件確定申告書には、署名欄のすぐ上に、大きく「平成9年分の所得税の確定申告書」と印刷されていること、請求人が当時20歳で、意思能力等に問題があったことを窺わせる証拠がなく、請求人は、調査担当職員に、本件確定申告書は、自身で住所と名前を記載し提出した旨を説明していること、還付金の振込先として説明した口座が、還付金が振り込まれた口座と一致していることに照らすと、請求人は、自己が署名した書類が、所得税の確定申告書であることを認識していたものと認められ、また、本件確定申告書には、還付金の受取場所(振込先)として、請求人名義の口座が記載されていたと推認することができ、請求人は、その記載も認識していたと認めることができる。そして、請求人は、これら本件確定申告書の記載内容及びこれを提出することについて、何ら異議を述べていないことなどに照らすと、請求人は、本件確定申告に係る一連の手続について、兄に包括的に委任していたというべきであり、上記委任の効力は、その後の、本件確定申告の内容を是正する手続である本件修正申告にも及ぶと解すべきである。そうすると、請求人の兄が、本件確定申告書を提出し、また、本件修正申告書に請求人の氏名等を記載して提出したとしても、本件確定申告及び本件修正申告はいずれも有効というべきである。
《参照条文等》 国税通則法第17条第1項 民法第99条
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 請求人は、確定申告に係る一連の手続について兄に包括的に委任していたというべきであり、その委任の効力は、その後の修正申告にも及ぶと解すべきであるから、当該確定申告及び当該修正申告は有効と認められるとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(国税通則法>納付義務の確定)
- 分離長期譲渡所得等について、保証債務の履行のための譲渡に関する課税の特例を適用すべきであるとしてなされた更正の請求に対し、確定申告書にその旨の記載がなく、また、その旨の記載がなかったことについてやむを得ない事情があるとは認められないとして、当該特例を適用することはできないと判断した事例
- 課税土地譲渡利益金額の計算上控除される譲渡経費の算定方法につき、確定申告において概算法を採用したときには、後日、実額配賦法を採用して更正の請求をすることはできないとした事例
- 「更正の申出に対してその更正をする理由がない旨のお知らせ」は国税に関する法律に基づく処分に該当しないとした事例
- 不動産売買契約の解除に伴う損失は当該契約解除のあった日の属する事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入すべきものであって、国税通則法第23条第2項の規定により、そ及して所得金額を減額修正することはできないとした事例
- 請求人が収受した立退料等に関する納税申告の適否に端を発して関与税理士が請求人を相手として提起した慰謝料請求等事件に係る判決の言渡し(請求人敗訴)があったことを理由に、当該立退料等につき租税特別措置法第37条の適用があるとしてなされた更正の請求には、理由がないとした事例
- 被相続人の遺産を構成しないことを確認する和解は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決等に当たるとした事例(平成21年11月相続開始に係る相続税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・全部取消し・平成26年5月13日裁決)
- 株式の売買代金が時価相当額より低額であるとして類似業種比準価額方式により評価し、売主に対して所得税更正処分等、買主に対して法人税更正処分等がそれぞれなされた場合において、売主側が提起した所得税更正処分等取消訴訟において当該処分等の取消判決が確定しても、買主側は国税通則法第23条第2項第1号に基づく更正の請求をすることはできないとした事例
- 国税通則法第23条第2項ないし同法施行令第6条に規定のない納税者の主観的な事由は、同項の後発的事由に該当しないとした事例
- 登録免許税及び不動産取得税を固定資産の取得価額に算入した会計処理の選択の誤りを理由とする更正の請求は認められないとした事例
- 相続税法第32条第3号に規定する更正の請求をすることができる期間の起算日は、遺留分減殺請求訴訟の和解が成立した日であり、適法な期間内に提出された更正の請求を前提とした同法第35条第3項第1号の規定に基づく原処分も適法であるとした事例
- 請求人は、確定申告に係る一連の手続について兄に包括的に委任していたというべきであり、その委任の効力は、その後の修正申告にも及ぶと解すべきであるから、当該確定申告及び当該修正申告は有効と認められるとした事例
- 国税通則法第23条第2項第1号及び相続税法第32条第1号に定める更正の請求は、請求人にいずれか有利な規定を適用することはできないとした事例
- 国税査察官の調査は、国税通則法第27条の「国税局の当該職員の調査」に該当しないとした事例
- 刑事判決は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「判決等」には当たらないとした事例
- 出資口の譲渡について、売買契約の要素に錯誤があるとして契約解除したことが、国税通則法第23条第2項に規定する「やむを得ない理由」に該当しないとした事例
- 本件出資口数の売買契約が錯誤により無効である旨を確認した判決があったとしても、そのことにより国税通則法第23条第2項第1号に該当することとなったとは認められないとした事例
- 本件判決は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決には該当せず、本件判決を基にして、同規定による更正の請求はできないとした事例
- 少額配当等に係る更正の請求は認められないとした事例
- 前事業年度に係る更正処分について訴訟係属中であっても、当該更正処分が無効と認められる場合でない以上、当該更正処分の結果に基づきなされた本件更正処分は適法であるとした事例
- 判決理由中で認定された事実に基づいてなされた更正の請求について、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「判決」には当たらないと判断した事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。