租税特別措置法第66条の4第1項に規定する独立企業間価格を算定するために必要と認められる帳簿書類が原処分庁の要求後遅滞なく提出されておらず、原処分庁の行った独立企業間価格の推定も適法であるから、同条第7項の推定規定を適用して移転価格課税を行った原処分は適法であるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2006/09/04 [租税特別措置法][法人税法の特例][特定資産の買換えの場合等の課税の特例] 請求人は、租税特別措置法(平成16年法律第14号による改正前のもの。以下「措置法」という。)第66条の4第7項に規定する帳簿書類等とは我が国の納税者が作成・保管することを要求されているものをいい、我が国の納税者が保有していない外国で作成されている資料は、同条第8項に規定する帳簿書類等に該当し、あくまでも入手努力義務があるにすぎないこと、国外関連者との取引価格の算定資料については、同社との取引を独立した第三者間の取引と認識しているため、見積書以外はないところ、当該資料は原処分庁に提出したから、提出すべき資料はすべて提出していること及び請求人が再販売価格基準法及び取引単位営業利益法により算定した独立企業間価格によれば所得移転はないことから、帳簿書類等を請求人が提示又は提出しないことを理由として原処分庁が同条第7項の推定規定を適用して更正をしたことは違法である旨主張する。
しかしながら、原処分庁の調査担当職員が提示又は提出を求めた資料は国外関連者の財務諸表及び国外関連者との取引価格の算定資料であるところ、これらは、独立企業間価格の検討を行う上で基本となる資料であり、国外関連者が有する帳簿書類等であっても、措置法第66条の4第7項の帳簿書類等に含まれるものと認められるから、これらの独立企業間価格の算定に不可欠な帳簿書類等が遅滞なく提示又は提出されない場合には、同項の推定規定の要件を充足すると解される。また、請求人は、請求人が主張する再販売価格基準法が本件における独立企業間価格の算定方法として合理的であると主張するが、当該方法については、取引段階及び取引市場が国外関連取引とは異なっていることから、比較対象取引としての類似性を有するものとは認められず、請求人が加えた差異の調整も、当該差異の調整の算定根拠が不明で、その合理性が認められないから、請求人の主張は採用できない。さらに、請求人は、取引単位営業利益法により計算したところによれば所得移転はない旨主張するが、請求人が用いた方法は、比較可能性を検証する事項についての言及もないまま、単に請求人と国内関連企業2社の計3社の平均連結営業利益率と請求人が競合他社と認識している2社の営業利益率を比較しているものであり、合理性が認められないから、請求人の主張を採用することはできない。そうすると、原処分庁は、請求人から独立企業間価格の算定に必要な帳簿書類等の提示又は提出を受けることができず、他に比較対象取引となり得る取引も見出せなかったことから、本件国外関連取引に係る独立企業間価格の算定に当たって措置法第66条の4第2項第1号イ、ロ、ハ及びニに掲げる方法のいずれも適用することができなかったものであり、当審判所の調査の結果によっても、当該独立企業間価格の算定について当該各方法のいずれも適用することができないと認められる。
したがって、原処分庁が、本件調査により国外関連者の総原価の額を把握し、措置法第66条の4第7項の規定により独立企業間価格を推定したことは適法である。
平成18年9月4日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 租税特別措置法第66条の4第1項に規定する独立企業間価格を算定するために必要と認められる帳簿書類が原処分庁の要求後遅滞なく提出されておらず、原処分庁の行った独立企業間価格の推定も適法であるから、同条第7項の推定規定を適用して移転価格課税を行った原処分は適法であるとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(租税特別措置法>法人税法の特例>特定資産の買換えの場合等の課税の特例)
- 特定の資産の買換えの課税の特例を適用した船舶の譲渡契約に係る対価の額には、内航貨物船に係る建造引当権が含まれており、当該建造引当権の対価の額につき買換えの特例が適用されないとした事例
- 請求人のパナマ子会社は特定外国子会社等であるから、同社の損失を直接請求人の所得金額の計算上合算して申告するのは相当でないとした事例
- 本件船舶の譲渡価額のうちには船舶建造引当権の対価の額が含まれており、当該船舶建造引当権の譲渡対価については、租税特別措置法第65条の7に規定する特定資産の買換えの特例の適用はないとした事例
- 試験研究費の額が増額した場合等の法人税の特別控除(租税特別措置法第42条の4)について、修正申告により増加した法人税額に対応する控除の増額は認められないとした事例
- 買換資産の取得価額の変更に伴って生じた圧縮限度超過額は翌期以降における買換資産の取得に充てるための特別勘定として経理したものとすることはできないとした事例
- 外国子会社合算税制の適用除外要件である所在地国基準の適用に当たり、特定外国子会社等はその事業を主として本店所在地国で行っていると認定した事例
- 譲渡資産は特定資産の買換えの特例の対象から除外される「たな卸資産」に当たるとした事例
- 船舶の定期検査費用を傭船者が負担する場合には、所有者である法人において当該船舶に係る特別修繕準備金の積立額を損金の額に算入することはできないとした事例
- 「○○」取引を行う特定外国子会社等について、その主たる事業は「卸売業」に当たらず、その事業を主として本店所在地国において行っている場合にも該当しないとした事例
- 海外子会社から○○用器具を購入する審査請求人の取引について移転価格税制を適用し、当該取引は利益分割法により算定した独立企業間価格で行われたものとみなされるとしてされた更正処分等は適法であるとした事例
- 特定外国子会社が納付する我が国の事業税は、税額控除の対象となる外国法人税に該当しないとした事例
- リースにより賃借した臨床検査用機器は、機械及び装置には該当しないから、中小企業者等が機械等を賃借した場合の税額控除制度は適用されないとした事例
- 請求人が原処分庁に提出した上申書等は租税特別措置法施行令第39条の7第26項の買換資産の取得期間延長申請書としての法定記載事項を欠き、また、最終提出期限を経過した後に提出されたものであるから、適法な取得期間延長申請書とは認められないとした事例
- 本件土地の取得価額とともに借入金の利子を建設仮勘定に計上しており、新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例の適用上損金不算入金額はないことから、以後の事業年度における累積損金不算入額もないとした事例
- 租税特別措置法第66条の4第1項に規定する独立企業間価格を算定するために必要と認められる帳簿書類が原処分庁の要求後遅滞なく提出されておらず、原処分庁の行った独立企業間価格の推定も適法であるから、同条第7項の推定規定を適用して移転価格課税を行った原処分は適法であるとした事例
- 特定外国子会社について、その事業の管理、支配及び運営を自ら行っていないとして、租税特別措置法第66条の6第1項の規定が適用されるとした事例
- 土地等が譲渡資産との関係において買換資産に該当しないときは当該譲渡資産との関係において建物等だけを買換資産とすることはできないとした事例
- 請求人が取得した新規取得土地等の基準取得価額は、本件土地と造成工事とは一体として取引されたものであるから、本件土地と造成工事代金との合計額であり、また、本件土地の取得日は、造成工事が完了し宅地に地目変更された日であると認められるから、負債利子損金不算入期間の起算日は当該日の翌日であるとした事例
- 海外のF島に本店を置くG社が、0%から30%までの間の税率を選択できる制度を利用して26%の税率を選択して納付したF島の法人所得税については、法人税法第69条第1項に規定する外国法人税に該当せず、G社は租税特別措置法第66条の6第1項に規定する特定外国子会社等に該当するとした事例
- 請求人は、区分所有建物であるマンションは一戸でも譲渡すれば、これに係る新規取得土地等に係る負債利子の損金不算入額の全額を損金に算入すべき旨主張するが、1棟の建物のうちの一部の区分所有物が譲渡されたというだけで、その敷地全体が譲渡されたと同じに扱うことはできないとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。