相続税法第34条の連帯納付責任に基づく督促処分が適法であるとした事例
[相続税法][申告及び納付]に関する裁決事例(国税不服審判所)。
裁決事例(国税不服審判所)
2003/07/03 [相続税法][申告及び納付]請求人は、本来の納税義務者Aに対する延納許可から延納許可取消しまでの間に、原処分庁が適切な徴収手続をとらず、連帯納付義務者である請求人に多大な本税、利子税及び延滞税の負担を課していることは徴収権の濫用に当たる旨主張する。
しかしながら、連帯納付義務は、相続税の徴収の確保を図るために課された特別の責任なのであるから、本来の納税義務者が現に十分な財産を有し、同人から固有の相続税の徴収を図ることが極めて容易であるにもかかわらず、原処分庁が同人又は第三者の利益を図り、あるいは、連帯納付義務者に損害を与える目的をもって、恣意的に、本来の納税義務者からの徴収を行わず、連帯納付義務者に対してその義務の履行を求めたという事情の存する場合には、徴収権の濫用があると評価できる余地もあると解されるが、延納の制度は、法が納税者の自発的な納税を本来の姿と考え、これを容易にするため当該措置を認めているものであり、延納等の措置を講ずることによって任意の納付の履行が期待できる限り原処分庁がこれを認めようとするのは当然のことである。
したがって、延納を認めたことで結果的に本来の納税義務者の財産によって相続税の全てを納付することが不能になったとしても、そのことをもって原処分庁が故意に恣意的な徴収手続を行なったとまではいえず、原処分庁が請求人に対し連帯納付義務の履行を求めたとしても、徴収権の濫用に当たるとはいえない。
請求人は、原処分庁が連帯納付義務に係る賦課決定通知書を送付していないから、請求人の連帯納付義務は確定していない旨主張する。
しかしながら、相続税法第34条第1項に規定される連帯納付義務は、相続税徴収の確保を図るため相互に各相続人等に課した特別の責任であり、各相続人等の固有の相続税の納税義務の確定という事実に照応して、法律上当然に生ずると解されているから、本件相続の共同相続人であるAの相続税の納税義務が有効に確定している以上、請求人の連帯納付義務は、格別の手続を要することなくAの納付義務の確定に照応して確定している。
請求人は、原処分庁が行ったAに対する延納の許可から延納許可の取消しまでの徴収手続に違法があるとして、請求人の連帯納付義務は消滅している旨主張する。
しかしながら、延納の許可と連帯納付義務は異なる租税法規を根拠とするものである上、相続税法、国税通則法及び国税徴収法のいずれにも、請求人が主張するような延納の許可に関する違法等の存在によって連帯納付義務が消滅する旨を規定した条文は存在しない。
むしろ、連帯納付義務は、法が相続税の徴収を確保するために各相続人等に課した特別の責任であること、延納の許可に当たって十分な担保を徴していても、担保価値の変動によって担保物を処分しても相続税が徴収できなくなる可能性があることを鑑みれば、原処分庁は、延納の許可の際に徴した担保を処分して徴収を確保する方法と、連帯納付義務者にその履行を求めて徴収を確保する方法を併存的に有していると解するのが相当である。
平成15年7月3日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 相続税法第34条の連帯納付責任に基づく督促処分が適法であるとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(相続税法>申告及び納付)
- 相続人以外の者が市街化調整区域内の農地の特定遺贈を受けた場合において、受遺者の責めに帰さない事情により当該農地が非農地化されたときには、農地法上の許可を受けていなくても、非農地となった時点において所有権移転の効力が生ずるというべきであるから、受遺者については、その非農地化の事実を知った日をもって相続税法第27条第1項に規定する「相続開始があったことを知った日」と解すべきであるとした事例
- 相続税法第34条第2項の連帯納付義務には補充性は認められず、また、連帯納付義務者に対する差押処分は、財産の選択を誤った国税徴収法第49条に反するものとはいえないとされた事例
- 相続税法第34条第6項に規定する連帯納付義務の納付通知処分が適法であるとした事例(連帯納付義務の納付通知処分・棄却・平成26年6月25日裁決)
- 更正の請求の直前における請求人の相続税の課税価格は相続税法第55条の規定に基づき民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って計算されていたものではないから、当該更正の請求は相続税法第32条第1号の要件を欠くものであるとした事例
- 相続税法第35条第3項の規定に基づいて行われた増額更正処分は、その処分の前提となる更正の請求が同法第32条第1号の要件を満たしていないから違法であるとした事例
- 相続税法第34条の連帯納付責任に基づく督促処分が適法であるとした事例
- 相続税法第34条第1項の連帯納付義務は、相続税徴収の確保を図るため、相互に各相続人に課した特別の責任であって、各相続人の固有の納税義務が確定すれば、他の共同相続人に徴収手続を行うことができ、滞納者に徴収手続を尽くした後でなければ、共同相続人に徴収手続を行えないというものではないとされた事例
- 「相続させる」旨の遺言の法的効果を前提として、未分割財産が分割されたことを事由とする相続税法第32条第1号の規定に基づく更正の請求は、その前提要件を欠くとした事例
- 相続税法施行令第8条第1号に規定する判決は、請求人が訴訟当事者である判決に限られるとした事例
- 相続税法第32条第3号の「減殺の請求があったことを知った日」とは減殺の請求が調停、判決等で解決した場合にはその解決した日とした事例
- 相続税法34条4項の連帯納付義務は、受贈者の贈与税の納税義務の確定という事実に基づいて法律上当然に生じるもので、特別の確定手続を要するものではなく、その範囲は、受贈者が負っている本税及び延滞税のすべてについて、贈与した財産の価額を限度として負担すべきであるとした事例
- 相続税法第34条の連帯納付義務に基づく督促処分及び差押処分が適法であるとした事例
- 相続により受けた利益の価額が確定していないから連帯納付義務はいまだ発生していないとする請求人の主張を排斥した事例
- 遺産分割審判に係る高裁決定を不服として許可抗告の申立て及び特別抗告が行われている場合における相続税法第32条の更正の請求をすることができる「事由が生じたことを知った日」は、当該高裁決定に係る文書が送達された日であるとした事例
- 調停により遺産分割が行われた場合における相続税法32条第1号の更正の請求ができる「事由が生じたことを知った日」は調停が成立した調停期日の日であるとした事例
- 更正処分の取消訴訟が提起されても、行政事件訴訟法第25条第1項により処分の効力、執行等を妨げないから、遺産分割が確定したことによる更正の請求の基礎となる総遺産価額は、当該更正処分により確定した額によるとした事例
- 遺留分権利者が遺留分減殺を原因とする土地の共有持分移転登記請求訴訟によって同土地の共有持分権を取り戻したことは、遺留分義務者の相続税法第32条第3号の更正の請求事由に当たるとした事例
- 被相続人の全財産を書面によらない死因贈与により取得したとする請求人の権利は、和解成立前においては、法定相続人から撤回される可能性が極めて高く、極めてぜい弱なものであったといえることから、請求人が自己のために相続の開始があったことを知ったのは、和解により当該死因贈与契約の一部の履行が確定した日であると判断した事例
- 相続税の連帯納付義務についての督促処分前に行われた当該相続税を担保するための抵当権の抹消に当たり、その判断に誤りがあるとしても、当該督促処分が権利の濫用に当たるとはいえず、民法第504条の類推適用又は国税通則法第41条第2項の規定により連帯納付義務が免責されることもないとした事例
- 法定相続人である請求人が、自己のために相続の開始があったことを知った日は、遺留分減殺請求をした日ではなく、被相続人の死亡を知った日であるとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。