被相続人が同族法人に対して有していた債権は、消滅時効の完成により消滅していたとはいえず、被相続人に帰属するものと認定した事例
裁決事例(国税不服審判所)
2002/04/10 [相続税法][相続税の課税財産の範囲][預貯金等] 被相続人が同族法人に対して有していた本件債権(未収入金及び貸付金)について、請求人は消滅時効の完成により消滅していること及び同族法人に対する請求権が存在しないことを遺産分割調停調書により当事者相互間で確認しており、相続人全員がこの内容に同意していることから、相続開始時に本件債権が存在するとして更正した原処分は違法である旨主張する。
しかしながら、本件債権が発生した時期及び請求人が時効の起算日とするいずれの時期においても被相続人は同族法人の代表社員の地位にあり、退社するまでの間、業務執行社員として同族法人の決算書類の作成に関与し、その内容について承知し得る立場にあったこと、また、同族法人の社員はすべて親族によって構成され経営されてきたことが認められることから、このような事情の下では被相続人と同族法人との間では毎期、決算書類の作成により本件債権の存在が相互に確認され、同族法人は債務を承認する事実行為を行ったものと認められる。
そうすると、本件債権に係る消滅時効は少なくとも、毎期、決算書類の作成により中断されており、相続開始時において債権の消滅時効はその要件を具備していないことから、本件債権は消滅時効を完成しておらず、本件債権は存在すると認められるから請求人の主張は採用できない。
また、調停において当事者は当事者の自由な意思により任意に、真実の権利関係とは異なる権利関係を進めることができるから、相続開始後、各相続人間において成立した調停において、本件債権は消滅時効により消滅し、同族法人に対する請求権が存在しない旨相続人間で確認している事実をもって、本件債権が消滅時効により消滅したので相続開始時には存在しなかったということにはならない。
平成14年4月10日裁決
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