公正処理基準に反しない会計処理の方法により決算を確定させて確定申告を行った後に、その会計処理方法を遡及して変更することは許されないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2009/10/16 [法人税法][所得金額の計算][損失の帰属事業年度] 請求人は、確定申告において本件事業年度の決算月(12月)の給与計算期間の締切日後の期間(12月16日から同月31日)に係る期末未払給与の額は期中に債務として確定しているから、前事業年度の期末未払給与の額との差額(以下「本件期末未払給与差額」という。)を当事業年度の損金の額に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、法人税法第22条第4項に収益の額及び損金の額は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」(以下「公正処理基準」という。)に従って計算されるものとするとあるのは、法人が採用した会計処理の方法に客観的、常識的にみて規範性があり、これが公正処理基準に該当すると認められるものであれば、法人の会計がそれに従っている限り、それを認めていこうとする態度を明らかにしたものであると解するのが相当であるが、請求人が多年にわたり採用してきた経理慣行に従って、期末未払給与の額を現実に支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することは、客観的、常識的にみて規範性があると認められ、また、企業会計原則に定める重要性の乏しいものは未払費用等として処理しないことができるとするいわゆる重要性の原則に照らしてみても公正処理基準に反するものということはできない。そして、法人税法第74条第1項において、確定した決算に基づき当該事業年度の課税標準である所得の金額又は欠損金額及び所得の金額に対する法人税額を記載した申告書を提出しなければならないと規定されており、確定申告後に確定申告の基礎とされた決算における会計処理の方法を変更することは原則として許されないものというべきであるところ、請求人が、多年にわたって採用してきた公正処理基準に反しない経理慣行に従って損益計算をし、これに基づいて確定申告をした後に至って、本件事業年度にさかのぼって会計処理の方法を変更し、改めて損益計算をして本件期末未払給与差額を本件事業年度の損金の額に算入することは認められず、請求人の主張には理由がない。
平成21年10月16日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 公正処理基準に反しない会計処理の方法により決算を確定させて確定申告を行った後に、その会計処理方法を遡及して変更することは許されないとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(法人税法>所得金額の計算>損失の帰属事業年度)
- 死亡保険金から支払義務を負う遺族補償金の最低限度である死亡保険金の50%相当額は、死亡保険金を受け取った事業年度において損金の額に算入されるとした事例
- 新製品開発のために支払った費用は当期において相手方から役務の提供を受けていないので当期の損金ではないとした事例
- 本店ビルの新築工事に際し、その共同事業者に支払った竣工時までの建中金利相当額は本店ビルの取得価額に算入すべきものとされた事例
- 山砂売買契約に基づきその事業年度中の山砂採取量に対応する採取跡地の埋戻し費用を原価としてその事業年度の損金に算入することとした事例
- 信用保証料は、一定の契約に従い継続して役務の提供を受けるために支出した費用に当たるというべきであり、事業年度末において未経過の保証期間に対応する額は、前払費用とすることが相当であるとした事例
- 預託金制ゴルフクラブの会員権につき、預託金の据置期間直前に、ゴルフクラブ経営会社との合意に基づいて、会員権が2口に分割され、預託金の一部が返還されたとしても退会したとみることができない以上、資産に計上している入会登録料を損金の額に算入することは認められないとした事例
- ひも付きの見合関係にない営業外損益については特定の期間損益事項に係る取扱いの適用が認められるとした事例
- 旧養老保険契約から新養老保険契約への転換がその後取り消されても、転換に伴って発生した収益を転換時に遡って修正するのではなく、取り消されたときの事業年度の損金として処理するとした事例
- 請求人が有する売掛債権は、その債権が消滅した事業年度の貸倒損失となるとした事例
- 日経平均株価指数オプション取引に係るオプション料等は当該権利の取得価額を構成するものであるとした事例
- 従業員に対する決算賞与について期末までに債務が確定しているとして損金算入を認めた事例
- 納入申告されていない料理飲食等消費税について債務が確定していないとした事例
- ゴルフ場開発事業について、その許認可及び土地の取得を請け負った法人が支出した、[1]工事設計申請業務の委託料及び[2]環境影響調査委託手数料等の額は、ゴルフ場開発のために要した費用として棚卸資産に計上すべきであるとした事例
- 付保されている車両の盗難に係る損失は、その保険金が確定するまでの間、仮勘定(未決算勘定)として処理すべきであるとした事例
- 建物附属設備の除却損について、当該建物附属設備に係る建物が売却された日の属する事業年度の損金の額に算入されるとした事例(平24.3.1〜平25.2.28事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・全部取消し・平成27年11月30日裁決)
- 本件事業年度の損金の額に算入した過年度棚卸資産廃棄損は、本件事業年度前の仮装経理における棚卸資産過大計上額であって、本件事業年度において生じた損失ではないから、本件事業年度の損金の額には算入されないとした事例
- 社債の払込みに充てられた従業員の特別賞与は損金算入できないとした事例
- 分割払の示談金は支払期日の到来する都度その債務が確定するとした事例
- 法人の代表者が法人の業務に関連してした保証債務を当該法人が無償で引き受けたことによる負担額は、債務の引受けの時ではなく、現実にこれを履行した時の損金の額に算入されるとした事例
- 代表者へのゴルフ会員権の譲渡は、名義変更停止期間中であったとはいえ、実体を伴った取引であるので、その譲渡に係る損失の計上は相当であるとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。